記念日B

□いい夫婦の日2013
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「以上で会談を終了します」

側近の言葉で会談が閉められた。



「ふー、肩が凝った」
「火影様、気を抜くのはまだ早いですよ」

火の国での会談が終わり肩を回していたところに、護衛の忍びに苦笑交じりにいさめられた。

「だって疲れちゃうものは仕方ないでしょ」
「それは十分承知していますが、どうか里までは気を張っていてください」
「大丈夫。優秀な護衛がいるからね」

俺の言葉に護衛は「光栄ですが」とまた苦笑で返した。
しかし疲れの本当の理由は会談ではない。

「はぁ。なんで今日なのかなぁ」

愚痴でもある呟きに、護衛が笑った。

「もしかして今日のイベントのことですか?」
「あー、うん」
「さすがは愛妻家で有名な火影様ですね」

他の護衛たちも姿は見えないものの気配を感じる。
それも笑っている気配が。


今日はゴロ合わせで「いい夫婦」と称される日。
特にこれと言ったイベントごとはないが、里では暗黙の了解で、世帯者に代わって独身者が進んで任務を引き受けることが多い。
普段は任務に出ている夫や妻たちが会えるようにとの配慮で、特に命令ではないが随分前からこれは続いていた。
しかしこれは代われる者がいる場合だ。
さすがに火の国と木の葉の里の会談は火影でないと務まらない。


「俺はこれでも真剣に困ってるんだよ。ただでさえ家に帰れてないし、これじゃぁいつクシナに愛想つかされるか…」

会談は当然里の外で行われる上に、議題が多いので一日では終わらない。
よりにもよってこの日に被るとは。

肩を落としながら指定された宿に着くと、待っていたかのように白い鳥が目の前に現れた。

「ん?これって…」

白い鳥はぽんと軽い音を立てて一枚の紙に変わった。
何かあったのだろうか。

さっと紙に目を通すと、思わず笑ってしまった。

里に何かあったのかと、少し張りつめていた空気もその反応で和らいだようだ。



「あぁもう。本当、俺の奥さんは可愛いなぁ」


その紙に何が書いてあるかなんて、そんな野暮なことは聞かない。
そもそも内容なんて聞かなくても火影のその表情で何が書いてあるかなんてだいたいわかる。
忍びは常に偽っていなければならないが、我らが火影はこと妻のことになるととたんにそれが出来なくなる、素晴らしい一流の忍びだ。
そしてその言葉を聞いて頬が緩む。
やはり火影は愛妻家なのだ。

「クシナへのお土産何にしようかなぁ」

楽しそうに呟く火影の後に続いて宿ののれんをめくると、「あ、そうだ」と火影はついでのように軽く口を開いた。

「帰りは最速で帰るからね」

その言葉に護衛が固まったのは言うまでもない。






黄色い閃光についてこい、と。
火影様マジ鬼畜。
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