過去拍手

□新婚夫婦の夫の誕生日
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※ミナクシ結婚後







任務を終えた綱手が里に帰ってきたのはもう日もどっぷり落ちた頃だった。

任務の報告を済ませ、酒でも飲もうと大通りに出ると見知った顔を見つけた。

いや、正確には“顔”ではなく、“姿”と呼ぶべきか。

彼は綱手には背を向けていたからだ。

壁からこっそりと顔を出すような姿は、まさしく「覗きをしています」と背中に書いてある。

思わず半眼になったが、どうせなら驚かしてやろうと気配を消して近づいた。

「そこで何してる」

「!!」

声をかけると驚いて目を見開いた彼が振り向いた。

しかし声を上げなかったのは、さすが三忍と呼ばれただけはあるか。

「な、なんじゃ綱手か…驚かすな」

彼―自来也はそう言って胸をなでおろした。

「お前、今度は何覗いてるんだ?くノ一の更衣室か?それとも女風呂か?」

「こんな道から見えるわけないだろう!」

「じゃぁ何覗いてるんだ」

自来也の返答の微妙さには目をつぶって綱手が聞くと、自来也は手で見て見ろと合図をした。

綱手は渋々ながら覗くとそこからはあるアパートの部屋が見えた。

綱手は片手を額に当て、どうしたもんかと頭を抱えたまま、後ろに控えていた自来也に向き直った。

「お前がいくら女好きとはいえ、人妻はどうかと思うぞ」

「違うわ!」

「それで、四代目火影夫婦の部屋を覗いて何が楽しいんだ?」

自来也の反応を流し問うと、待ってましたとばかりに笑顔になった自来也は実はな、と話し出した。

「今日は我らが四代目火影の誕生日なんだよ」

「ほう。そうだったのか。お前が弟子の誕生日を覚えてるなんて驚きだ」

「何日か前に里をぶらついてた時にクシナに会ってな。その時相談を受けた」

楽しそうに話す自来也がにやりと笑う。

自来也のこういう笑みは大概よくないことを考えている時だ。

「…クシナに余計なことを言ったんだな?」

思わず眉が寄ってしまったのは仕方のないことだろう。

「ちゃぁんと相談に乗っただけだ。他には何もしとらん」

にししと笑う自来也からは悪びれた感じは一切しない。

その姿を見て思わずため息をついてしまった。

要するに、クシナに余計な入れ知恵をして、結果を確認しようと覗いていたということか。

「お前、ミナトに殺されるぞ?」

「弟子の成長を見られるとは、師匠としてこれ以上ない喜びじゃのう」

当代火影である波風ミナトは愛妻家としても里では有名である。

加えて新婚という現状、余計なことをすればただでは済まないのは火を見るより明らかだ。

綱手はまたため息をついた。

「相談された内容は推測できるが、お前はどんな入れ知恵したんだ?」

きっとクシナはミナトの誕生日に何をプレゼントしたらいいかと聞いたに違いない。

自来也はまたにししと笑って見つけた時と同じように覗きの態勢に入って言った。

「何をプレゼントしたら一番喜んでくれるか、と聞かれてな。ミナトはお前さんが一番好きなんだから、可愛くラッピングしてみたらどうだとな」

「お前…」

綱手はもう何も言えず三度のため息をついた。

自来也はあえて“クシナ自身”をプレゼントするように勧めた。

しかも“可愛くラッピング”してだ。

どう考えても、自来也が覗いて反応を見て楽しむことを前提に入れ知恵したとしか思えない。

思わず三度ため息をついてしまった。

あきれてものも言えない。

昔からこういった類のいたずらが好きで、しょっちゅう余計なことをして遊んでいたのは知っているが、相変わらずらしい。

まぁ、あのミナトのことだ。

可愛い新妻を悪いようにはしないだろう。

「自来也、一応忠告しておくぞ。覗きはやめてさっさと帰れ」

「こんな楽しいことやめられるわけないだろう」

自来也はこういう男だ。

「そうか。それじゃ私は帰るからな」

「おう。気を付けてのう」


綱手は今度こそ間違いなく酒でも飲もうと歩き始めた。
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