あの日から僕の狂気は止まらない
□第三章
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秋斗side
多紀から手渡された手紙。
それを見て、俺は驚いた。
「え、多紀!なんで葉塚のやつから…っ!?」
「………幼馴、…じみ…」
「……っ!すげー…」
差出人はあの世界トップ企業に君臨している『葉塚』の現当主のご子息。
つまり、次期当主である。
多紀の幼馴染みとは驚いた。
「どんな人?」
「…かわ…いい、…あと、やさ…しい…///」
「へー…、……で、なんで照れてるの?」
多紀は顔を赤くして、それは嬉しそうに話していた。
だから、葉塚のご子息はとても素晴らしい人なんだとばかり思ってた。
……このときは。
「………ん、?」
目を薄く開ければ、自分が今床の上に転がされているのだということが分かり、ゆっくりと体を起こした。
「どこ…?」
辺りを見回せば、そこは薄暗い部屋というより、牢屋。
でも、柵なんかはなくて目の前に扉があるだけ。
窓は…………、ない。
「…なんで、こんなところにいるんだっけ。」
…――あっ!!
あの平凡が、たしか俺を…。
「目が覚めましたか?」
「誰だ…っ!!」
ふとそちらに目線を移すとそこに居たのはあの平凡。
「よく眠れましたか?」
笑いかけながら俺に一歩ずつ近付いてくる、平凡。
いつもは何とも思わないその笑みが、今はとても恐怖に感じた。
「なんで…っ、こんな…!!」
「……っ、ハハハハは……、アハハハは!!」
「っ!?」
突然、何か弾けたように笑いだす平凡……。
否、もう平凡の欠片すらない。
俺たちが平凡と言っていたあの顔ですら、もう、平凡とは言い難いものになっていた。
…そう、
“狂ってる”……
俺はまだ、この後訪れる悪夢に気付くはずもなかった。
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秋斗side−end−