忍者
□戯言と黒い追跡者
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とりあえず、この子の髪を整える準備をして、ハサミでその行為を行う。
それにしても本当、勿体ない。
「本当、勿体ない」
声に出てしまい、ナルトが、え? と声を出す。
「だって綺麗な髪だったのに。しかも私よりも長くて…本当、羨ましかったのに」
「あはは。サクラちゃんにそう言われるなんて、嬉しいってばね」
「逸らさないの。それにしても何で切っちゃったのよ?」
「言ったじゃん。邪魔になったからって」
「だったら、とっくの昔に切っているはずよ。いや、まずロングにする必要もなかった」
そう言い返したら、ナルトは押し黙ってしまった。
「それにアンタ、サスケ君のこと好きなんでしょう? サスケ君、髪が長い子が好みらしいし、どうしてわざわざ対照的なショートにしたのか、私には理解不能だわ」
「ああ、やっぱり。サクラちゃん、気がついていたんだってばね」
感心したようにナルトは呟く。
なによ、意外に冷静ね。それとなによ、興味無さげなそのトーン。
「うーん、だから髪切ったんだってばよ」
「え?」
「だからわざと、サスケの好みから外すように切ったんだってばね」
「…それ、普通、逆じゃない?」
普通は好きな相手のタイプになろうと、必死になるものだと思うのだけど。
「だって、オレはサスケと両想いになるつもりはないし、これからもない。むしろ、一生独身でいる気満々」
「え? でも好きなんでしょう?」
「恋って不可抗力だってば。誰も好きになるつもりはないのに、好きになっちゃう。厄介なものだってばね〜」
感慨深く頷くナルトに私は瞠目した。
なによ、それ。アンタ、どこの哲学者よ。らしくない。
「意外ね。アンタなら、諦めず猛烈アタックすると思ったんだけど」
「サクラちゃんほどじゃないってばよ。いくら望んでも、無理なもんは無理なんだからどうしようもない。だから諦めるしかないってば」