忍者
□戯言と黒い追跡者
1ページ/24ページ
「ナルトは恋しないの?」
あ、でもサスケ君はダメだからね! と、サクラちゃんが訊いてきて念押しされた記憶はまだ新しい。
恋はしている。誰であろうサスケに。
けど、それは叶わない恋。だって、彼とオレとは立場が違う。
サスケは里にとって希望の種で、オレは危険な種(サスケはうちはの生き残りで、オレは九尾の器)
あっちはオレが九尾の器なんだって知らないけど、どちらにせよ彼がオレのことを好きになるなんて、絶対に有り得ない。
有り得ない、のに。
「いい、ナルト! 邪魔しないでよね!! 絶対、間に入って来ないでよね!! 色目使わないでよね!!」
なんで、こんなに念押しされるのかなあ…?
確かにサスケのこと好きだけど、アタックする気がないしこの恋を叶えようとする気力も起きらない。
サスケのこと好きにならないよ、と言ってもそれが嘘と見破られているのか、オレとサスケの間にサクラちゃんが無理やり入ってくるようになった。
それからカカシ先生を待っている間にお話していた時間も、サクラちゃんはサスケに話しかけるようになった。
オレってば思いっきり蚊帳の外。寂しいけど、それを言ったらサクラちゃんの邪魔になるだろうから言わないでいる。
任務遂行中以外で、サクラちゃんとの時間もサスケと一緒にいる時間も無くなって、一人にいるときすごく胸が痛い。
でも、我慢。サクラちゃんとサスケがくっつけば、丸く収まるから。
オレがサスケのこと好きって言ったら、今以上にややこしくなるだろうから。
どうせ叶うはずのない恋。いや、オレが誰に恋したって叶うはずがないんだ。
だったら、想いに蓋をして一生を閉じたほうが楽なんだ。
今日もオレは一人、地面を眺める。
どうか、この時間が早く終わりますようにと祈りながら。