牡丹
□金色の朧
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それはまるで、呪(まじな)いの言葉のように。
子供が出来るんだ、とあなたは笑った。
自分が血を残せぬと知ったあの日。
空はどこまでも高くて。
ただ地上に立つ俺には、頭上を舞う烏さえも貴かった。
※
トンビが弧を描き、高い声を上げる。
「きれい……」
窓辺に寄ったナルトが感嘆の息を漏らした。
「先生、街がオレンジ色」
振り向くナルトの頬も、瞳と同様に綺麗な日暮れの色に染まっていて。
「あ……、先生の髪もオレンジ色だってば」
柔らかく微笑んで、ナルトが手を伸ばす。
「きれい……」
見上げてくる大きな眼は、きらきらと潤んで俺を映していた。
無邪気に向けられる瞳。
「お前も、綺麗だよ」
そっと抱き寄せると、ナルトが頬を染めて微笑みを浮かべる。
腕の中へ包み込むと、見た目以上に細い身体だと分かる。もうこのカタチにも随分と慣れた。
「……あったかい……」
ナルトが俺の腕に手をのせて呟く。
覚えた匂いに安心するように、俺は目を閉じた。