□不器用なキスK
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懐かれると困る。







俺達は忍びじゃないか。
こんな感情はおかしい。
今更馬鹿げている。





けれど、任務にならないほど落ち込まれていても困るから。
程々には元気で居て貰わなければいけないから。

だってあの元担任教師が煩いだろう?
特にお前は宜しく頼むと言われているんだ。



それなのに。

失敗だった。



どうしてあの日、あんな事をしたのだろう。



お前の家など泊まるべきじゃ無かった。



お前が、あんな顔で俺を見るなんて誰が思う?

あんな表情を見せるなど、誰に予測できた?




俺に何を求める?

俺に何を期待する?

俺に何を言わせたい!




俺を見るな。

俺の周りをうろちょろするな。

俺の前で声など発てるな。



……そんなに無様に笑ってるんじゃないよ。



苛々する。



何もかもが、腹立たしく感じる。








ナルト。







金色が、煩い。
清んだ碧が今にも毀れそうで。
いっそのこと、泣けばいいのに。
泣いて俺に縋ればいいのに。
そうすれば、肩を抱いてやるくらいの理由は出来るのに。
そうすれば、もう一晩くらいは泊まってやるのに。
希みならば、お前の布団にだって入ってやるのに。
寂しいと、あの表情でもう一度俺に言えば……。



窺うように俺を見て。

逃げるように俺から離れて。

ああ、お前はその子が大好きだったね。
ピンク色と金色が並んで。
何て清々しい色だろう!
眩しすぎて吐き気がする。
目を向けていられないのに、気がつくと視界に居る。



どうしてこんなに苛々する?

どうしてこんなに憎らしい?



その子と笑って、どんなに活き活きとしているか。
どんなにはつらつとしているか。

喜ばしい事ではないか。
これでもう、俺はお前に構わなくとも良い。
こんなに煩わしく感じなくとも良い。



それなのに。



どうしてこんなに苛々する?

どうしてこんなに憎らしい?



泣けばいいのに。
あの日の夜のように。
そうすれば、可愛げもあるのに。
そうすれば、俺は心置きなくお前をこの腕に抱き寄せてやるのに。



そうすれば、キスのひとつくらい……。



泣けば……。



金色が、煩い。

清んだ碧が今にも毀れそうで。

毀れないようにと、まるで確認のためだけに、俺は毎夜、彼を見に行く。



泣き顔を見たくない。

泣けばいい

任務にならないほど落ち込まれていても困るから。

泣いて
俺に縋ればいい

程々には元気で居て貰わなければいけないから。

そうすれば
もう一晩くらいは
泊まってやるのに

だってあの元担任教師が煩いだろう?
特にお前は宜しく頼むと言われているんだ。



だから。
それだけなのだ。

こんなに苛々するのは。









寂しいと
あの表情で
もう一度
俺に……








泣きたく、なるのは……。









――――
2006.9.19

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