牡丹

□クリスマスイブ
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 いつもの……




クリスマスイブ。

お昼過ぎ。
オレは、窓から外を眺めていた。
毎年……というか、毎回、イベントごとになるとよく見る光景……。

「いや、あの、だからね、もう予定は埋まってるから……」
「でも、丸一日じゃないでしょう?」
「あたし達にも、1分でいいから」
「いや、ごめん、もう行かなきゃ……」

女性たちに交じって。
ひとつだけぽつんと頭が飛び出している。
それをみながら、オレは一人ほほ笑む。

カカシ先生ってば、毎回大変そう。

「ちょっと、押さないで、ああ、もう……」

ぼやきながらカカシ先生が通りの向こうへと移動していく。

「あ、待って!」
「せめてこれだけでも受け取って!」



「大変だってばね」

そう、オレは背後の玄関へ向かって声をかけた。
カカシ先生は、壁に手をつきながら、靴を脱いでいる。

「なんの。それよりナルト、窓閉めて」
「ん?寒かったってば?」

分身でおとりを作ったカカシ先生の、こちらが本体だ。
口元まで隠したマフラーを取りながら、カカシ先生は、違うよ、と笑った。

ピンポーン

「間に合わなかったか……」
「カカシ先生、見つかったってば?」

尋ねると、カカシ先生は苦笑しながら首を振った。

「俺じゃなくて……」



「ナルト、居るの?クリスマス会するわよ!」
「あ、サクラちゃん……」
「カカシさんも居るんだ」
「サイ?」



二人の声に、あーあ、とカカシ先生は肩を落とした。

「せっかく二人きりだと思ったのにね」
「はは、明日もあるってばよ」

ちゅっと、軽いキスを交わして、オレは玄関をあけに行く。

「なっ、思ったより部屋の中寒いんですけど!」
「窓開けてたの、向こうから見えたしね」
「換気してたってばよ」

カカシ先生と、サクラちゃんとサイ、それぞれに持ち寄られた料理やケーキを並べる。

「そうそう、ナルト、家の前に居た女の子達は放っといていいの?」
「何がだってば?」
「無理無理、ナルトが気づくわけないじゃない」

サイの言葉に、サクラちゃんが笑う。

「そうだね、気づいてないだろうね」

カカシ先生まで笑っている。

「何だってばよ」

玄関へと見に行こうとして。

「待ちなさいって」

カカシ先生に止められる。

「お前は俺が追いかけられるのを楽しそうに見ていたけど、お前も追いかけられてるってこと」
「えっ?」
「けっこうたくさんいたよ」

サイが笑う。

「でも、サクラが来たら、ほとんど帰ったけどね」
「なによ、私が悪いの?」

シャンパンを氷で冷やしながら、サクラちゃんがサイをにらむ。
その様子を見ながら。

「夜は二人きりになれるかな」

カカシ先生が、そっとオレへと耳打ちしたんだ。









――――
2012.12.24.
 

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