牡丹
□バレンタイン 2013
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「今年も任務だってば?」
ベッドに寝転んだまま、ナルトは立ち上がったカカシに向かって声をかけた。
愛し合ったその余韻のまま、ナルトは腰にシーツをかけているだけだ。
「うん、ごめんね」
「いいってばよ。里の人気者を独占してんだから」
「ナルトも、でしょう?また、愛の告白されてたね」
「知ってたんだ」
衣類を整えながら、カカシは「うん」と微笑んだ。
「いや〜はは、急に好きって言われても、よく分かんないってばよ」
「これも、分かんない?」
不意にカカシは身をかがめると、ベッドに手をつき、ナルトへとキスをする。
「……これは、分かるってば」
ぼそぼそと、しかし嬉しげにナルトは笑う。
バレンタインデーとカカシの誕生日。
年に2回は、カカシは長期任務で不在となる事が決定している。
過去に起こった混乱が予想以上に深刻となった為だ。
『たかが男1人の為に負傷者が多数だと?』
里の警備員が目を白黒させて報告に来ていた。
はたけカカシの追っかけ同士が諍いを始めたのが契機らしい。
面倒を……言い方を変えれば不要な混乱を避ける為にとられるようになった苦肉の策が、該当時期のカカシの長期任務だ。
「今度はどこで任務だってばよ」
聞き返すナルトも重々その事情は承知しており、特に焦り等も無い。
「今回の任務地は近くだよ」
「近く?」
「里の中」
「え、大丈夫なんだってば?」
心配して聞き返すナルトに、カカシはくすくすと笑う。
「もう一人、バレンタインが危険になるだろうって男が現れたからね」
「誰だってばよ」
きょとんとしているナルトに、カカシは楽しそうに笑った。
「任務は、その男の警護」
「誰だってば?」
気になるのは、興味か、カカシと一緒に居れる相手への嫉妬か。
若干、後者の方が強いだろう。
「……羨ましい。相手」
「ふふ」
うつぶせで顔を伏せてしまったナルトの背を、カカシは指でなぞる。
「どうして拗ねてるの」
「オレだってカカシ先生と居たいってば」
「一緒に居るのに?」
「いや、今じゃなくて……」
「任務は、ナルトの護衛なのに?」
「え?」
「もう一人の人気者」
笑うカカシに、ナルトは体を起こした。
「……カカシ先生に人気ならいいや」
そして、せっかく整えられたカカシの服のボタンへと手を伸ばす。
「だったら服、脱いでろってばよ」
「ふふ……」
甘い口づけに、幸せな長期休暇を予感して心躍らせるナルトであった。
バレンタイン 2013
2013.2.14.