頂き物・リクエスト2

□優しい声 ‐その後‐
1ページ/5ページ


優しい声
‐その後‐





カカシ先生が復帰してからちょうど一カ月が過ぎようとしていた。



あの日、カカシ先生に鍵を渡して。

カカシ先生から言葉を貰った。

『カカシ先生と、同じ場所へ戻りたい』

声が出せなくなったカカシ先生のコミュニケーションの手段として使っていたスケッチブックは、今もまだ、オレの机の引き出しへとしまってある。

『お前だけが、戻る場所』

オレの希望に対する、カカシ先生の返事と共に。

きれいな、お手本のような字も、ぐにゃぐにゃの、オレのアカデミー時代の時のような字も。



カカシ先生の「死」の足音を聞きながら、何よりも強くカカシ先生の「生」を感じた。

静かでいながら、常に息遣いを感じさせた死神の鎌は、もう寸でまで、カカシ先生の首を刈ろうとしていた。

カカシ先生を楽に死なせる方法を考え、自分に嫌悪した。

そして、ともに死ぬことを希望した。



「死」について考えると、その強さと同じくらい「生」を感じるのは何故だろう。

人生の幕引きなんて言葉があるけれど、それと同じような感じだろうか。

幕が下りると同時に、観客はその劇を振り返り、思い出す。



生と死は、切っても切れない。

簡単に命は考えられない。



ばあちゃんが言った。

『そんなに……私達が信用出来なかったのか?』

カカシ先生を追って死のうと決意したとき、オレの中にはカカシ先生しかいなかった。

『全てを捨てるくらいに、私達の存在は軽いものだったのか?』

カカシ先生だけがすべてで、他の何も、オレの中には無かった。

オレが居なくなる事で、誰かが悲しむなんて、苦しむなんて、考える余裕も無かった。

『情けなかったぞ。これだけの人間が居て、誰も……お前の心にも引っ掛からなかったなんて。お前の苦しみを知ってやる者が、1人も居なかったなんて……』

カカシ先生を好きになって、大切だと思って、初めて知った。

オレは、色んな人に愛されていたんだって。
オレを大事に思ってくれている人が、こんなにたくさんいたんだって。



そして。



カカシ先生が、オレを愛してくれていたんだって……。













――――
2013.5.19.
※お待たせいたしました、まこと様。リクエストありがとうございます。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ