頂き物・リクエスト2

□こころつむぎ-カカシ-
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眠るナルトの顔を見ていた。
何の疑いもなく、安らいだ表情で寝息をたてている。

(ナルトが眠る事ができるならば、それでいい……)

ナルトがもう二度と目を醒まさないかもしれないという恐怖からは解放された。

そして、今。

眠るナルトを見て安堵する。

心優しいこの少年が、他者の為に悩み迷い、眠れぬ夜を過ごしていた事を知っていた。

(もう、これ以上、お前が心を煩わせる事はない)

そう思うのに。

果たしてあの時の、自分のあの選択が正しかったのか否か、それの答えをすぐには出す事が出来ない。

(……いや、ナルト自身が『答え』か……)



『……姉ちゃん、誰、だってばよ』



戸惑ったナルトの声。
笑みを浮かべたまま凍り付いたサクラの表情は、まさに俺の心中を表していた。



『……えっと……ここは、どこだってば?』



不安を口にし、俺とサクラが分からないと言った。

その姿を見て、俺を襲った動揺は、恐れだったのか、それとも。



(……安堵、だった……?)



任務とはいえ、こうなることが予測できなかった訳では無い。
そうと知りながら任務に向かわせたのは、そこに俺自身の私的な打算が無かったと、本当に言い切れるのか。

(……その結果が、これだ)

ナルトは任務どころか、生活に必要な最低限の記憶を残し、他の全てを忘れてしまった。
時折口にされる言葉を考えれば、忘れてしまったと言うよりは、記憶を封印してしまったと言った方が合っているかもしれない。

(お前が俺を忘れているのは、俺にとっては当然の報いだ)

仕方がない事。

当然の仕打ちと、頭では分かっているのに。



(俺だけは覚えていて欲しかったと思うのは、俺のエゴか)



ナルトを求めてやまぬ痛みが、俺の睡眠を奪う。



(眠れなくったっていい)



こうして、静かに寝息をたてるお前を見ていられるのなら。



『……オレは……ミを……』



激しい苦渋をにじませ、首を横に振ったナルトの表情が、未だに俺の心臓をわし掴む。

優しい少年。
強い、少年。
しかし、そんな賛辞はお前を俺から遠ざける材料にしかならない。

俺から離れて行かないでと、そう口に出来たらどんなにか楽だっただろう。



(私的に傍に居た事実も無いのに?)



『カカシ先生に憧れる姉ちゃんはたくさん居るだろー』

いつか、笑いながらそう言ったお前に、口付けて見せればどんな顔を見せてくれただろう。



『……オレ、どうしよう、嫌だと思わないってばよ、サイの冷たい指』

以前からサイとナルトが戯れていたのは知っていた。
サイの一方的な恋慕とたかをくくっていた。

『覚えているような気がするんだ』

真直ぐに、自分に正直な少年。

『サイの冷たい指先が、気持ちいいって思った。懐かしいって。そして、そんな事を、昔言ったような……』

苦しい、なんて。
そんな事は言わない。
口に出したところで、優しいお前を苦しめる材料にしかならないだろう。

感情を表に出すほど若くもなく。
後悔と懺悔の念からすまないと泣いてしまえればどんなにか楽か。
しかし、それを出来るはずもなく。



(……1度だけでいい)



ただ、この1回を。

どうか許して欲しい。



月の光に、若い頬が美しい。

ナルトの唇にそっと指を這わせる。

その指の触れていたところに、そっと唇を当てる。



眠り姫よどうか今だけは目を醒まさないで。



祈るように唇へと口付ける。
















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2013.6.12.
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