頂き物・リクエスト2

□こころつむぎ-サイ-
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ナルトの記憶が混乱している。



僕にそう告げた綱手様は、いつも以上にその顔に苦渋の色を滲ませていた。



ナルトが任務に発ったのは、1ヶ月ほど前だ。
同じ任務に、3つのチームで、別々に当たった。
ナルトとカカシさんがひとチーム、僕が単独で、サクラとシノとキバがひとチームの3チームだ。

ただ、シノとキバは、単純に1チームだけの、追跡の任務だと思っている。
追跡した相手がケガしていた時の為にサクラが着いて来たという事になっているが、実際は、僕とカカシさんとの連絡の為だ。

味方にも秘密裡に、今回の任務は行なわれた。

途中経過としてはまずまずだった。
どこにもミスは無いように思われた。

しかし、そのさなか。

ナルトが、潜入先で行方知れずになった。
捜索に僕も加わった。
ナルトの潜入先は、かなりの危険があると、寄せられた資料だけでも推測できていた。

そうだ、予測できていたのだ。

その危険を。

あらかじめ。



『……暗部、の仕事ではないのですか』



迷った末、僕が行って良かったのにと切り出すと、綱手様は渋い顔をして頷いた。



『それは、否定はしない。だが、それは結果論だ。それに……』



適役、ということらしい。

そこに危険度が加味されていないのは、暗部経験のあるカカシさんに、実力では里一であろうナルトとのコンビだからであろう。



『カカシが情報操作及び調整を、ナルトが潜入をしていた。カカシも、その采配に、承知していた』



カカシさんもその危険を予測し、その上で、ナルトを向かわせていた。

結局任務は果たされたものの、一時ナルトは行方知れずになっており、翌日、前日から探しに出ていたカカシさんに連れられ戻って来た。

それから3日。

ナルトは目を覚ますことなく眠っていたと聞いたが……。



扉を開けると、ナルトが顔を上げた。

「ナルト、目が覚めたんだってね」
「うわっ、露出度高っ」

綱手様、それにカカシさんも居る。

(……ここでも、カカシさんが着いているんだね)

それをいちいち不快に思う程敏感ではないが、目につくのは確かだ。

(毎度の事、だけどね)

さらりと、空気のようにいつもそこに居るカカシさんに、嫉妬にも似たもどかしさを感じるのはいつもの事で。

(何も、不安になる事はないはずなのにね)

僕がナルトを好きだと公言しているのは、周知の事実だ。
――今の、ナルト以外は。
皆が知っている事。

けれど。

全く僕の事を覚えていないナルトに、イタズラでキスしようとすれば、ナルトは身を引いて目を丸くした。

「な、何だってばよ」

驚いているナルトに、既視を覚える。

「びっくりするだろっ」

いつかも、こうしてナルトは驚きの声を上げた。

『何すんだってばよっ、びっくりするってばよっ』

以前にキスをした時。
僕の行動に怒るでもなく、顔を赤くして、ナルトはそう抗議した。
抱きしめれば、戸惑ったように身を固まらせていた。

普段はあんなにも堂々としているのに。
色恋沙汰にはすごくうとい。
あれで昔はサクラに言い寄っていたのだと言うから、にわかには信じがたい事だ。



柔らかい髪。

健康的な身体。

明るい笑い声。



『サイってば、女の子だったってば?』



同じ反応、同じ、言葉。

僕は2度目もまた、同じように、君に目を奪われる。



(……これが、いとしい、てことだよね)



抱きしめると崩れてしまいそうな、温かな尊い想い。



「サイってば、女の子だったってば?」



君の声に、喉がつまる。



「……冗談、だよ」













――――
2013.6.27.
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