ナルト・カカシ誕生日

□2015.ナルト誕生日
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柔らかな陽の光を頬に感じた。
誰かがカーテンを引いたらしい。

(……朝……)

と、ぼんやりとした頭が、急速にピントを合わせていく。

「なっ……!」

そこには誰も居ない筈だった。
自分以外は。

「……おう、起きたか」

すぐ頭の上で声がした。
枕がいつもより少し硬い。

(いや、つぅかこれ……)

「お前っ、何してんだってばよっ!」

慌てて身を起こしたナルトは、未だ寝そべり、ナルトに腕枕をしていたそのままの姿勢でゆったりとナルトを見上げている男を見下ろす。
ナルトを腕に抱いたまま、器用に横のカーテンを開けたのだろう。

「お前も寝ていただろう? 何間の抜けた質問してんだ。ふっ、お前らしいが」
「なっ……、何か、すっげぇバカにされてる気がするってばよ……?」

首をひねるナルトに、九喇嘛は面白そうに喉を鳴らした。

「って、違う! 色々突っ込みどころあるけどっ!」
「飯、食うんだろう?」
「食うけど……って、お前、何で下着姿なんだってばよっ!?」
「ああ?」

指を向けるナルトに、九喇嘛は初めて、芯から驚いた表情を見せる。

「服なんて着て寝た事ねぇからな。本当はこれ(下着)も脱いどきたかったくらいだ」
「そ、それは……やめてくれってばよ」
「だろう?」

ニヤリと笑う九喇嘛に、故意的にその様な行動をとっているのではないかと疑ってしまう。

(つか、いちいち無駄な色気振りまくなってばよ……)

朝から疲労感を感じるが、それを今九喇嘛に伝えた所で、面白がられるだけだろう。

「さあ、飯だ」
「……ああ」
「俺は食わねぇけどな」
「……あっそ」

そっけなく答えながらも、その口元に小さな笑みが浮かんでいる様子に、九喇嘛はナルトの背に向かって目を細めた。





「お前、今日は誰かと待ち合わせか?」
「ん、いや、それは何も……。約束は夕方からだし」

もぐもぐと口を動かしながら、ナルトは首を振る。

「じゃあ、俺と出かけるか」
「えっ……お前、外歩いて大丈夫なのかよっ」
「……汚ねぇな……、飲み込んでから喋れ」
「あ、悪ぃってばよ」

ナルトの口から飛び出したレタスの切れ端に、九喇嘛は眉をしかめた。

「でも、お前、その姿でって……」
「問題ない。慣れてしまえば、元の姿で居る時よりも体が軽いくらいだ」
「……まあ、確かに軽いだろうってばよ」

質量的にも。
もう、突っ込む気力も無いが。

「身体の分、チャクラも使わずに済む。その分凝縮されているが」
「あ〜……」

確かに、九喇嘛の身体からは、薄い透明な膜のようなチャクラの揺らぎが見えた。

(きれい、だってばね……)

目を凝らせば、澄んだ、透明な光を捕える事が出来る。

「――何、見惚れてんだ」
「えっ?」

顔を上げると、片手で頬杖を付いた九喇嘛が、ニヤニヤとナルトを見ていた。

「見惚れてねぇってばよっ!」
「ふん」
「お前のチャクラ見ていただけだろっ」
「別に、悪くはねぇな」
「?」

九喇嘛は楽しそうに唇の端を引く。

「お前の頬が紅く染まるのを見るのは、なかなか趣がある。それも、俺を見て、だ」
「お前、いつからそんなキャラに――」
「さっさと食え。お前、服はどこだ?」
「そこのクローゼットだけど……っておい、何勝手に開けてんだってばよっ!」
「ろくな服持ってねぇな」
「余計なお世話だってばよ! あっ、そこ下着! 開けんなって! お前出てきてから自由過ぎるだろっっ!」
「ああ、これとこれなら……まぁ、マシか。ナルト、来い」
「ああ〜……」

何も言っても無駄なようだとナルトが気付く頃には、ナルトは九喇嘛の手によって、衣類を総替えされていた。
ベージュのクロップドパンツに、グレイのアンダーシャツ、ダークブルーのシャツ。
確かにナルトが持っている服ではあったが、全て貰いモノで、何となく面倒さもあり、数回しか着た事は無い。

「いつもの服が落ち着くんだけど」
「俺に合わせろ」
「……」
「何だ?」
「……別に、もう、何だっていいってばよ」
「ふん」

九喇嘛もナルトの服を適当に漁っていたが、いくつかを見繕い、ため息を吐いた。

「小せぇな……」
「何だよ、俺の体格は標準だってばよ」
「そういえばお前、トイレの時も……」
「標準だってばよ! ……多分……って、何言わせんだよ!」
「――俺は別に何も言ってないが」
「〜〜〜っ!」

涼しい眼を向けられ、ナルトは声に出ない声を出す。

「まあいいか。行くぞ」
「自由だなっ!」

先に歩き出した九喇嘛を追い、ナルトも慌てて後を追った。

(それにしても……あの服、全部俺のだよな……?)

九喇嘛が着ているのも、ナルトが持っている物には変わりは無かったが。
ダークブルーのスキニーパンツに、黒のカッターシャツ。
無造作に上から2つはだけられたボタンは、九喇嘛をより一層引き立てている。

(何か、アレだ。……嫌味だ)

「どうした。鍵掛けとけよ。お前いつも――」
「あー、はいはい」
「ふっ」

(いいけどさ……)

光の中で笑う九喇嘛は、心から楽しそうで、自然とナルトの表情も柔らかくなる。












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2015.10.20.
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