□「赤い月」−銀の雲−
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「っ……ん、ああっ、先生っ、カカシ先生……っ!!」

明かりを消した部屋に、甘い声が響いている。もう毎夜の事で、慣れてしまった少年の身体は、貪欲に快楽を求めていた。

ナルトが自らカカシの部屋へと来るようになって、もうどれくらいが経過しただろう。カカシの予定を把握し、それに合わせて扉をたたく。もうそれが、当然であるかのように。カカシの名を呼び、窺うように顔を見上げる。張り付いたような笑みも、やがて見慣れてしまった。

もう、以前のナルトの表情がどんなものだったか思い出せぬほどに。

「そこっ……やぁっ、いいっ……いいよぉっ……カカシ先生ぇ……っ」

嬉しそうに頬を上げ、とろりとした眼差しでカカシを見つめる。
もっと欲しいとカカシ自身を締め付け、足を絡める。

「もう……っ、もうオレ、あ……ああっ……!!」

声を我慢するなときつく言いつけた結果、こんなにも淫乱な少年へと変貌を遂げた。

想い合っていたシカマルとの中へカカシが割って入った結果、シカマルとナルトはもう、ほとんどプライベートでは会う事は無くなった。時折シカマルがこちらを見ているが、ナルトが顔を上げる事は無い。シカマルと目が合っても、シカマルが直接カカシへと言って来たのは、ただの一回だけだった。
『どうして良いか分からない』
聡い少年は、その恋の終わりを予測しつつ、少しずつ距離をおいていった。



「……お風呂、もう一回沸かして来るってばよ」

行為を終えたナルトが顔を上げる。いつものことだ。行為の前に浴室を掃除し、行為の後にも風呂を沸かしなおす。義務的な行為を覚えさせたのは、誰か。カカシはそっと息を吐いた。
カカシが風呂から上るのを待って、ナルトも風呂へと入る。以前はそのまま帰っていたが、それをカカシは禁じた。汚れたままの体よりも、石鹸の香りのする身体を好んだ。その方が、より一層情事の後だと感じさせる。帰り道に誰かと会ったとしても、ナルトのその身体より、何かを感じればいい。
誰にもナルトは渡さないと、カカシはじっとナルトの入っている浴室へと視線を送った。



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休日の待機よりも張り合いがなく、つまらなく、都合の良いものは無い。ゆっくりと足を伸ばしたカカシの耳に物音が届き、カカシは顔を上げた。視界に入れるまでもなく、それが誰であるか把握はしていたが。

「暇だろ。来てやったぜ」
「暇だけど忙しいの」

そう返して、カカシは再び大きく伸びをすると目を閉じる。最近はこの男と待機することが多くなった。

「俺よりも、アスマちゃんの方が忙しいでしょ」
「ん?」
「若いコ、しかも教え子たぶらかして。言い訳でもしに行ったら」
「……な、お前……早いな」
「俺をだ〜れだと思ってるの」
「参ったね……」

以前、教え子、イノに恋の告白を受け、前向きに考えるとしていたアスマだったが、いつしか、紅との関係が本気へと変わってしまったらしい。イノも感づいてはいるようだが、別段変わりはない様子である。
忍びの人生は短く、一番幸せになれる相手と居れる事が良いとアスマは以前言っていた。その相手が紅であった。ただ、それだけのことであろうが……。

「……あ、ほら。来たよ」
「……そんな言い方すんなよ」

カカシに次いで、アスマも顔を上げる。







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2007.12.15.
*お待たせ致しました、楓様。都合上、こちら(黒)へ。
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