頂き物・リクエスト2

□キモチノカケラ
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「先生、結婚式いつ?」
「式には呼んでよ、先生」

アカデミーの食堂。
後ろで賑やかな声が聞こえる。

「……イノにサクラも……、結婚式なんてしないよ」

どこか照れたようなカカシ先生の声。

「……結婚、できたらいいねって言ってるの」
「つまり、結婚するってことでしょ?!」

高い声に、オレは振り向かずにおかずのウインナーに箸をぶっ刺した。



オレが先生に好きって告白してから、一週間。

先生に、彼女が出来た。



先生は、彼女と一緒に暮らし始めたらしい。
先生の部屋。
女の人が出入りしてるって。

「ナルト、アンタも先生の彼女見に行くでしょ? 一緒に住んでるから、いつでも居るって」
「結婚前だからもう仕事も辞めてるらしいわよ」

肩を叩かれて、オレは顔を上げる。
本当は興味津々だけど。
初めて聞いたって顔をしてみせた。

サクラちゃん、イノ、それからヒナタが先生の彼女を見に行くって。
突然お邪魔するって。
じゃないと、先生、彼女を隠してしまうかもしれないから。
あんまり見せたがらないって。
オレは、コーヒーを買いに行ったカカシ先生の背をちらりと盗み見る。

先生の背中。
ちょっと猫背で。
でも。
キレイな筋肉をしてるんだろうなって、分かる。
その姿は、その視線の先すら特別なものに見せて――。

「突然彼女出来たんだってばね、先生」

誰へともなく、強がった言葉。
サクラちゃんは不思議そうに首をかしげた。

「だって、今までばれないように大事にしてたんでしょ?」

ずきりと痛んだ胸は、行き場の無い想いの昇華の方法が無い事を教えている。

「お前達、何の内緒話? もう、迷惑でしょ」
「!!」

どきりとして顔をあげる。
一瞬だけ合った先生の視線からは、何も読み取れなくて。
ただ、困ったように苦笑しているってだけで。
オレなんて、意識していなくて。

「先生、隠さなくてもいいじゃない。ね、玄関まで!!」
「……ホントに……。帰ってから決めるよ」
「先生、もう尻に敷かれてるの?!」

先生は笑っている。
幸せそうだった。
先生は、彼女の話をする時、すごくすごく優しい顔になる。
優しい表情で、笑う。



――あの時、オレを振った時と同じ表情で……。



****




サクラちゃん達は、先生の家へ行って来た。
彼女さん、居たって。
先生にご飯作って、待ってたって……。
『あら、ナルト君は?』
そう、聞いてきたって。

「アンタ、知り合い?」

……先生、彼女さんに言ったのかな。
オレが、先生のこと好きって言ったって。
だから、彼女さんが……。

(……だって……先生に彼女いるなんて知らなかった……)

「何かね、懐かしい感じの人だったわよ」

サクラちゃんが言った。

「どっかで会ったような感じ。カカシ先生も彼女のそんな処にひかれたのかしら」

イノとヒナタも同じ意見だった。
それだけ素敵な人だったのだろう。

でも。

いくら、そんな人であったとしても――……。



――先生が好き。

それだけなのに。
先生が幸せなら、それでいいはずなのに。



どうして、涙が出そうになるのだろう。



どうして、胸が潰れそうになるのだろう……。








――――
2008.2.2.
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