頂き物・リクエスト2

□キモチノカケラ
3ページ/15ページ

 
家に帰る気にならなかった。
任務が終わって。
もう、結構な時間が経ったはずだ。
明日も任務なのに。

明日も、カカシ先生と顔を合わせなきゃなんないのに。

すっかり暮れてしまった街を見つめる。
火影岩の上。
ちらほらと見える明かりの、その一つ一つに家族がある。
この里で、1人で暮らしているのなんて、サスケとオレくらいだったけれど。
それは以前の話で。

(……今は、1人で……)

1人?

――独り、だ。

「……帰りたく……ないってばよ」

ここでぼんやりとしている方が、カカシ先生を思い出す事が少ないような気がする。
遠くに見える明かりが、こんな事、よくある事だよって言ってる気がして。

部屋にたった一人いるのは、辛い……。

また、涙がジワリと浮かんで来た時だった。

「――何、してるの」

不意に、背後から声をかけられた。
はっとして振り返る。
気配なんて無かった。
嫌な気配では無くても、不意打ちは驚く。

「……変な顔」
「……サイ……」

いつもの無表情で、サイが、座っているオレを見下ろしていた。

「ここ、寒くない?」
「え……別に。何だってばよ、お前」
「別に。ここに来たくなっただけだよ」
「……」

サイが隣に腰かける。

――それが、嫌、というわけでは無かった。
むしろ――……。

「いつもここに来てるの?」
「別に」
「そうだよね、ここでこの時間に会うのが初めてなら、あまり来たことないね」
「……お前、いつもここに来てんだってば?」
「時々」
「……ふぅん」

きらきらと、街の明かりはそのひとつひとつが揺れていた。
まるで、その、ひとつひとつに生命があるかのように。

(……キレイ……)

オレも、街に帰れば、きっとあの明かりの一つになる。
オレも、この里を作る小さなパーツの一つに……。

(ただ、それだけ……)

カカシ先生だって。
カカシ先生の彼女だって。
皆、この世界の一部でしかすぎなくて。
そんな、小さな存在のはずなのに。

――なのに。

どうしてカカシ先生じゃなきゃダメだって思うのだろう。
どうして、カカシ先生の彼女が、すごく特別な存在で、すごく羨ましくて、疎ましいって思ってしまうのだろう。

こんなにもたくさんの明かりがあるのに。

どうして、カカシ先生の部屋の明かりだけが眩しくて、近寄れないって思ってしまうのだろう。

どうして、特別だと……。

「……お腹、空かない?」
「え?」

突然考えを中断されて、オレはサイを見る。

「夕食でも食べようか」
「何、言ってんだってば?」

サイを見ると、サイは微笑んだ。
いつもの、表情で。

「親睦を深めるには腹を満たすのが一番だ。……と本に書いてあった」
「親睦? オレと? 今更?」

サイの作り笑い。
分かっているのに。

(サイの読んでる本もあながち嘘じゃないってば)

つられて、オレも小さく笑った。

「……サイってば、変」
「いい店を知ってるよ」








――――
2008.2.3.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ