頂き物・リクエスト2

□キモチノカケラ
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それから、サイは暇があれば、オレを食事に誘うようになった。
サイと過ごす時間は、苦痛ではなかった。
時々吐き出される毒舌は、他の人へ向けてであったりオレへ向けてであったりしたけれど。
腹はたたなかった。
寧ろ、オレは笑っていた。

サイは、ずばりとものを言う。
それが、気を使わなくて良かったのだろう。
時々言い過ぎたかなって思う事があっても、サイは笑って流して、更に何か別の事を言って来た。

互いの間に引かれた一線。
決して侵略されず、深入りしてしまう事もない。
その距離は、とても心地よかった。
どこか懐かしさをも感じる距離。



任務でカカシ先生と会う。
やっぱり苦しくてどうしようもなくなるけれど。
涙は出そうになってしまうけれど。
任務が終われば、サイが遊んでくれるから。
また、バカな事を言い合って笑えるから。
だから、泣かずに頑張ろうって思った。
まだ、カカシ先生が好きだったけれど。
任務が終われば、カカシ先生は彼女の待つ部屋へと戻って行くけれど。

サイと会っている間は、笑う事が出来る。
カカシ先生の事を忘れない日は、忘れない時は無いけれど。
でも。
オレは、何も無かった顔をしていることができる。

こんなの、応急処置みたいなもんだって分かってる。
でも、応急処置だったとしても、傷は徐々に治って行く。
ゆっくりとでも。
いずれそこにトラウマとして瘢痕化してしまったとしても。
――それでも。
ぐじぐじと傷口が化膿してしまうよりはずっとましだった。

――間違った応急処置が、傷を悪化させてしまうなんて、その時のオレに考えられるはずもなくて……。



****




「どうしたの?」

サイがオレを見る。
いつからか、外食が勿体無くて、サイがうちへと来るようになった。

「サイって、色白いってばよね」
「……そう?」

サイは怪訝そうな顔をしたけれど、そのまま肩をすくめた。

「ナルトだって白いじゃない。それに、傷も無いから」
「オレは……」

九尾が居るから。
すぐに細胞が元に戻るから、肌にそういう物質が溜らないから。
だから、白い……んだと思うけど。
日焼けなんてした事が無い。

「オレより、あと、カカシ先生も白いってばよ」
「……」

何かの時に、カカシ先生が着替えているのを見た。
何の時だったか忘れたけれど。
任務の途中。
雨が降った時じゃなかっただろうか。
サクラちゃんが、自分に一言声をかけてから脱げって怒っていた。

先生の肌。
彼女さんはいつも見てるんだろう。
着替えなんて、きっとしょっちゅう見てるんだってば……。

(いいな……)

それが、カカシ先生の『特別』なんだって分かっているけれど……。

「……先生の肌の方が、キレイだってば」

もう一度、呟いた時だった。

「――あいつの話なんてどうだっていいよ」

サイが、不意に低い声を出した。
オレは顔をあげる。

――サイは、いつも作り笑いをしていた。

だから、それが嘘って分かってても、オレは、ほっとしてしまって……。

それなのに。

「鬱陶しいな」
「サイ……?」

椅子から立ち上がって。
サイはオレを見下ろす。



火影岩で、会った時のように……。






――――
2008.2.4.
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