頂き物・リクエスト2

□キモチノカケラ
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「ナルトってさ、何でいつも彼を見てるの」
「え? どう言う事だってば?」
「任務の時、帰る時」
「そんな事、無いってば……。だいたい、ついも任務が一緒とは……」

曖昧に笑おうとしたけれど。
サイは目を細めた。

「――誰、とは言ってないよ。彼、としか言っていない。どうして特定してものが言えるの?」
「っ?!」

いつの間に。
サイは、オレの隣に立っていた。
身体の向きを変える。

じっと、サイを見た。
サイも、オレを見ている。
見合ったまま、どこか冷やりとした空気が流れた。

「あ……サイ……?」

――何故、サイが突然笑みを消したかなんて分からない。
オレってば、何か気に障る事を言ったのだろうか。

「……どうしたんだってば……?」

分からずに見上げる。
サイは、じっとオレを見下ろしていた。

サイは、時々得体が知れない。
怖い、ていうのとは違う。
分からない、という方が近いだろうか。
こんな表現も、おかしいけれど……。



それから、どれくらいがたっただろう。

「……なんて。何を言ってるのだろう」
「え?」

サイが再び笑みを浮かべた。
何だろう。
どこか、距離を感じるような笑み。
それから、サイは窓の方へと顔を向けた。

「街へ行こうか」
「えっ?」

突然の申し出。
話の脈絡が分からずに聞き返す。

「何、男同士が厭なの」
「サイ?」

サイは変化した。
黒髪の、ショートの女の人。
服も、パンツスタイルの女の人のものに変えている。

「行こう、ナルト」

白い肌に黒い、どこか影を思わせる深い目。
紅い唇が、きれいな笑みの形を作っていた。
すっと手を出されて、サイだと分かっているのに不思議な感じがする。
このくらいの年齢の女の人に慣れていないからだろうか。

「……変、だってばよ」
「変じゃないよ」

声も、少し高い。
けれど、落ち着いた声。

「目立つってば」
「――いいよ、目立って」
「え?」

サイが笑った。

「ナルトも変化したら?」
「……」

戸惑ったけれど。
オレは、サイがまた元の笑みをつくったことに安心していた。
同時に、怒らせたくないとも思う。

(……そう、か……)

弱い心。
カカシ先生で空いた空虚を、サイで埋めようとしている。

(だから……)

あの時、突然横に座られた事が嫌ではなかったのだ。

オレも変化する。
男に。
でも、髪が暗い焦げ茶色になったくらいだけど。

「へぇ……」

サイは目を細めた。
今までのサイの、笑う、という感じよりも。

目を、細めた。

どこか楽しそうなのは気のせいだろうか。

「――デート、しようか。ナルト」
「え……?」

サイがオレの腕をとる。

「夜の街、デート、しよう」



――カカシ先生。

考えても、考えても、心の穴は大きくなっていくばかりで。

笑みを浮かべてオレを見ているサイの、女性へと変化した黒いその瞳を。

オレはただじっと見つめ返していた。







――――
2008.2.6.
*気付けば10万hitありがとうございます。大変ありがたく思います。何もしていません。…すみません。これからもよろしくお願い致します。ありがとうございました。
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