牡丹
□優しい声T
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♯4
「……それで、任務をサボってきたのか」
綱手のばあちゃんの前で。
オレはしゅんと肩を落とした。
「……だってさ、何か、嫌な予感したんだってばよ」
「……はぁ」
綱手のばあちゃんは、腕組みをしてオレを睨みつけるようにして見ている。
「アスマ先生が来るなんて、向こうの班も大変だってばよ!それに……」
「シカマルが居る。それに……」
今日オレ達がする予定だった任務の紙を見ながら、綱手のばあちゃんは大きく溜息をつく。
「今からでも間に合うから任務に戻れ。ほら、二人も来たし」
「ナルト!何してんのよ!」
ばあちゃんが指差すと同時に、扉が開いて、サクラちゃんとアスマ先生が入ってきた。
「すみません、綱手様」
アスマ先生が頭を下げる。
ついでに、オレの頭もサクラちゃんから押さえつけられた。
だって。
オレってば、てっきりカカシ先生ってば、何かあったんだとばかり……。
「本当に、カカシ先生は大丈夫なんだってば?」
もう一度確認すると、ばあちゃんは頷いた。
「あと数時間も横になっていたら治る」
「俺もお前達の処へ来る前に見てきたが、別に怪我も無かったぞ。眠ってはいるが、大丈夫だった。何せ、あのカカシがそう簡単にダウンするかよ。……体力は無いが、すぐに回復するさ」
アスマ先生も、呆れたようにオレを見ていて。
カカシ先生、きっと写輪眼使ったんだってば。だから……。
「ほら、さっさと戻る!」
「う、分ったってばよ……」
追い立てられるようにして、ばあちゃんの部屋を出て行った。
けれど。
「あ、ナルト」
ふと、ばあちゃんがオレを呼んで。
「任務が終わったらここへ来い。カカシも来るはずだから」
「え……」
ばあちゃんってば、オレがカカシ先生のこと好きなの、知らないよな?
オレが飛んできたから、早く任務に戻そうとしてそう言ったんだよな?
サクラちゃんが、にやにや笑ってオレをつついた。
けれど。
「さ、分ったら、行った、行った!」
その時のばあちゃんの顔が。
「絶対、大丈夫だってばっ?」
ちょっとだけ曇ってるみたいに見えて。
「ちゃんと会わせると言っているじゃないか」
オレはやっぱり任務中も、ずっと不安を消すことが出来なかったんだってば。
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2006.10.8