牡丹
□愛しい人 〜純真〜
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何故こうも惹かれる?
問うて答えが出るならこんなに愛おしくはない。
純真
まさか、こんなに何の疑いもなくナルトが着いてくるとは思わなかった。
カカシが意識しすぎているだけで、本人はラーメンでも食べるつもりだったのだろう。
その日一日の出来事を、思いつくままに並べ立てていた。
なんて無邪気に笑うのだろうか。
この小さな身体に、いったいどれだけの思いを抱えて生きてきたのだろうと、いつも思わずにはおれないのに。
誰かを呪ったりする生き方だけは、覚えて欲しくなかった。
しかしそれは、カカシの自己中心的な偏見に近い思いで。
カカシの心配などよそに、ナルトはいつの間にか、周りを巻き込んで、許すこと、認め合うことを他人に教えられる人間に育っていた。
心を閉ざした者達の悲鳴を、誰よりも早く知り、理解できる。そして、どうすれば救うことが出来るか、いつも魂で、全力で向かい合って生きていた。
まだ、ほんの子供だと思うのに。
無意識に、そうやって他人を救うことを学んでいる。
これからナルトは、いったい他人のために、どれだけの傷を受けることになるのだろう。その時そばにいるのが自分だったら良いと願うのは、カカシの勝手な思い上がりだろうか。
ナルトはスキンシップが多い。他人との触れ合いが少なかった幼少の反動か。
嬉しいことなどあると、全身で喜びを伝えてくる。
抱きつかれて、いつもカカシがどんな思いで、抱き返したい衝動を必死に耐えているのか、ナルトは知らないだろう。
いや、いいのだ。そんなことは。自分の自制心が勝てば良いだけの事。感情のコントロールの訓練は、いやというほど受けてきた。
だからこそ。こうやって無邪気に様々な思いをぶつけてくるナルトが可愛くて仕方が無いのかもしれない。
しかし。
カカシの思いは、もう、それでは納まらないところまできていた。
毎晩のように夢を見る。
ナルトが自分の腕の中で、快楽に悶える夢を。
顔を見るたびに思い出す。
笑顔を見るたびに想像してしまう。
その表情が、自分の手によって歪む様子を。
抱きつかれるたびに考える。
このまま服をはぎとってしまったら、ナルトはどんな顔をするだろう。
抱き寄せて、思い切りかき擁いて、朝まで―――。
ナルトと二人きりになるたびにそんな事を考えて。
ついに最近、手を出してしまった。
キスだけ。
キスだけしたら、もう諦めると。ナルトにはおまじないだと教えて。
けれど、ますますナルトは懐いて。
諦めるどころではなかった。
人の欲の深さを思い知った。
今朝もナルトの夢を見て。
ナルトの泣き顔に欲情した自分を恥じたところで、もう、その欲求は隠せないところまできている。
自分が色欲に富んだ人間だということはよく知っていた。
けれど、まさか生徒に欲情する人間だとは思わなかった。しかも、その欲情が一時的な通過性を持つものではなく、恋愛感情を含んだ欲求になってしまっている。
自分はおかしい。
自分が一番よく分かっていた。
このままではもっとおかしくなってしまう。
そのような本を読んで昇華させたって、思い返すのはナルトのことばかり。
今朝見た夢で、ナルトは泣きながら「愛して欲しい」とカカシに甘えてきた。
「欲しい」と足を開いて、「何でもするから」と、カカシのものを―――。
思い出して、一日のうちに何度も身体を熱くした。
もう、我慢できない。
このままでは、きっと暴走してしまう。
まだ、理性が勝っているうちに―――。
だから、今日。
賭けに出た。
ナルトを誘った。ナルトは何を疑うでもなく、「分かった」と答えた。
この、罪悪感。この罪の意識が自分の中からそのような欲求を全て取り去ってくれれば良かったのに。
借りた宿までの間。
一人楽しそうに喋り続けるナルトを見ながら、カカシは必死に高ぶる想いを抑えていた。
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