牡丹
□遠い約束 (5/29〜)
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「俺にしとけよ」
シカマルが、呟くようにそう言った。
おれは頬を伝う涙もそのままに、ただ目を見開いていた。
「……俺でいいじゃん」
頭の上から、シカマルの低い声が聞こえる。
シカマルの熱い体温が。
シカマルの早い鼓動とともに伝わって。
「絶対、泣かせねーから……」
シカマル、何、言ってるの……?
「忘れろよ」
左手が、動いて。
両腕で抱き締められた。
大事にするから、て、シカマルが囁いた。
おれは、ただ。
震えているシカマルの腕を、テーブルに置かれた左手を、ただじっと見つめていた。
カカシ先生が居なくなって。
もう、一月が過ぎようとしていた。