□衝動(1/31〜完結)
3ページ/41ページ


****




「ナルトのお帰りなさい会しよう、先生!」

サクラが上忍待機所へと駆け込んで来て、アスマと紅とガイが同時に顔を上げた。

「あ、皆さんもいらっしゃったんですね。カカシ先生、ナルトが帰って来ました!今さっき!自来也様も!」

「……そう」

――ざわりと、背中に電気が走る。

「……良かった、ね」

辛うじて搾り出した声は、ひどく掠れていた。
しかし表情はマスクの陰に隠れ、俺は無事に、サクラの言葉に応える事に成功した様だった。

「もう、カカシ先生ってば。嬉しいのねっ!照れちゃって!!」

「ちょ……やめなさいって。もう」

サクラが俺の脇をつついてきて、俺はただサクラの頭を撫でる事しか出来なかった。
そんな様子に、紅もガイも笑っている。

――ただ、アスマだけがじっと俺を見ている事に俺は気付いていた。

しかし問いかけに答えてやる気なんて更々無い。

俺は視線を外す事で、それを無視した。



****




サクラに指定されたのは翌日の午後からだった。
紅とアスマとガイの班のメンバーが来るらしい。

『二度と、オレの前に現れるなってばよ』

そんな言葉を吐いた彼が。
其の場に俺の姿を見つけたら、何と言うだろう。
何と、感じるだろう。

――あの日と同じ、怯えた目で、恐怖を浮かべるだろうか。



『や……っ、やめ……っ!』

耳に残る、ナルトの悲鳴。
恐怖に怯えた眼差し。

『何で……先生……』

裏切られた哀しみと屈辱が、その瞳に渦巻いていた。



「……今更……」

どんな顔をして会えるだろう。

どんな言葉をかけられるだろう。



――あの日。



あの、月のキレイな夜に。

俺は永遠に清廉なる少年を失った。






――――
2007.2.1.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ