□衝動(1/31〜完結)
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−−1年前−−




「カカ〜シ先生ぇ〜っ!来たって〜ばよぅ〜!」

歌うようなナルトの声が聞こえて、俺は飲んでいたウイスキーのグラスを台へと置いた。
窓の外に気配がする。

玄関を開けると同時にナルトが飛び込んで来た。
俺は苦笑しながら、飛び込んで来たその身体を抱き留める。

見た時にも思ったが、旅に出ている間に随分成長した。




――俺の燻っていた曖昧な感情を、しっかりとした形へと自覚させてしまう程。




「オレってば、お呼ばれなんてイルカ先生だけだったから、今日は嬉しいってばよ!」

にこにことしてつきつけられたスーパーの袋には、様々な種のカップラーメンが入っている。

「これ、誰が食べるの」
「ん、先生とオレだってばよ?お土産、だってば」
「……お土産……ね。……ま、いいけど。上がりな」
「おっじゃましまーす!」

元気に駆け込んで行くナルトの背を見つめながら。




――あの日俺は、何を考えていたのだろう?




俺の家へと来たいとナルトが言った。
いつでもいいよと言ったのはその日の午前ではなかったか。
ナルトが修行の旅より戻って来てすぐだった。
突然の訪問に、驚くよりも困惑したのが事実で。




――そう言えば、驚く程月がキレイな夜だった。




「あーっ、先生、お酒飲んでるってばよ!これ何だってば?!」
「ダメよ〜、お前はまだこっち」
「えーっ、いーじゃん。一口〜っ」
「言う事聞かないなら帰すよ」
「ちぇっ」

ソファーに座り、クッションを抱えて足を揺らしている姿が子供らしくて。
しかし、風呂上りで走って来たのだろう、その濡れている襟足は何とも艶めかしかった。

「風呂入って来たの。何で?」
「先生、ちょっと遅くなるって言ってたから。時間あったし」
「……ああ」

翌日の任務の打ち合わせと調整があった。
一時間もかからない簡単なものだったが。

「それよりね、俺、腹減ったってばよ」
「何か食べる?」
「んー……」

俺は、カップ麺を探り始めたナルトの手をとった。

「何か作ってあげるよ」
「本当に?でもすぐ食べたいってばよ!」
「任せなさいって」

普段ならば面倒だと思う事なのに、何故か心弾んでいた。

簡単に冷蔵庫をあさってこしらえたものだったが、ナルトにはひどく嬉しい事だったらしい。

食事中から上機嫌になり、後片付けは自分がするのだと張り切った。

結局は一緒に片付けたが、ナルトの手際の良さに感心したのは事実だ。

「んー、だって、オレがしなきゃ誰もしてくれないし。だからカップラーメンは好きだってばよ」



満面の笑みで返された言葉に、どこか胸の奥が苦しかった。





――――
2007.2.2.
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