□衝動(1/31〜完結)
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――守ってやりたいと。

その時確かに思ったのに――……。






「えっ、泊まってっていいんだってば?」
「いいよ。明日休みでしょ?俺も明日は昼から任務だからゆっくり出来るし」

翌日は、夜にかけて国境へと出向かなければならなかった。

「やった!じゃ、先生、アレ見せて。いつも見てる本」
「……だーめ。見たら追い出すよ」

風呂の準備をして部屋へと戻ると、ナルトがソファーの上で転がって俺を見上げていた。

「ぶぅ。いいってばよ、別に。面白くないし。お風呂、いってらっしゃい」

浴室へと向かいながら、微かな目眩を覚える。

――この部屋に、誰かが居たのなんて、いつぶりだろう?

もう、相手の顔も覚えていない。
女、だったような気がする。
……そんな程度で。

もっとナルトの微笑を見ていたかった。
その笑顔が、眩しいと、感じた。

いつもより過ぎたアルコールの見せた、幻影だったのかもしれないが。



――抱き締めたく、なった。



「先生、ゆっくりだったってばね!」

風呂から上がってくると、待ちくたびれたようにナルトは顔を輝かせた。
そんなにゆっくりと浸かって来た覚えは無い。
寧ろ、いつもに比べれば早いくらいだった。

「寝てて良かったのに」
「まだ11時だってばよ」
「まだ……て、この不良息子」
「オレはちゃんと朝起きれるからいいんだってばよ」

誰かと違って、とナルトが舌を出した。

赤い舌が、ナルトの白い肌に眩しくて、俺は再び目を細める。



取り留めの無い話をして。
横で笑っているナルトを眺めながら、ウイスキーのロックを飲んでいた。

いつもより、アルコールが過ぎたかもしれない。

気持ちが良かった。
隣に腰掛けたナルトが、じゃれるように俺へと触れてきて。
身を乗り出すように、膝の上に手を乗せてきて。
柔らかな、まだ幼さの残る少年の指が俺の頬と唇をなぞって。

「酒臭いってばよ、先生」

けらけらと笑っていた。

「……ん、くすぐったいよ、ナルト」
「先生ぇ、何か、色っぽい」

くすくすと笑うナルトが、いつも以上に可愛いく見える。

「何、色っぽいって……」

他に言葉無かったのかと笑うと、ますますナルトはくっついてきた。
じっと、俺の両目を見つめる。

「先生、ちょっと目が潤んでる。……へへ、声も、何かいつもと違う。面白い」
「面白いって……あ、ちょっと、ナルト」

両手で頬を包まれて、俺は少しだけ眉をひそめた。
ひんやりとしたナルトの両手。
いや、実際にはそんなに冷えてもなかったのだろうが。



火照った頬に気持ちが良くて、俺は目を閉じる。

ナルトの呼吸が、よりはっきりと感じられた。



――不意に、襲う目眩。



(……ナルト……)



その体温を抱き寄せて、腕の中へと仕舞ってしまいたかった。







――――
2007.2.3.
*徐々に募るカカシの想いを感じて下さったら嬉しいです。
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