藍
□純恋 2 (6/24〜完結)
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『はたけさんって、いったい何人、自称恋人がいるんですかねぇ』
それは、いつだったか。
路地を通りがかった時に偶然聞いた言葉。
『さあね。否定もしないから、増える一方じゃないの。本人だって把握してないよ、絶対』
カカシ先生の恋人って言う話に、何故かひどく傷ついて、誰が話していたか確認できなかったけれど。
隠れるようにして、カカシ先生についての話を聞いていた。
それは、「カカシ先生」としての話じゃなかった。
「はたけカカシ」としての話だった。
『でも、そうするのは本命を隠すためだって聞きましたけど』
『本命?』
『はい、もし本命がばれてしまったら、その女が狙われるからって。はたけさん、有名だから』
『……本命、ねぇ……。信じられねぇが』
『やっぱりただの噂ですか』
『いや、案外その噂、本当かもしれないけどな』
『どっちですか』
聞きたくなかった。
けれど、気になって仕方が無かった。
『その本命に勝てる女が居るなら、喜んで本命を乗り換えるって、言ったらしいぜ』
『乗りかえって……そんなに簡単なんですか』
『いや』
男の人が、どうでもいいように、大きく伸びをする気配があった。
けれど、オレにはすごく重大な問題で。
『その本命に、相手にされていないんだと』
『えっ……、あのはたけさんでもおとせない相手がいるんですか。すごい、女ですね……』
〈おとせない〉の意味がよく分からなかったけれど。
言っている内容は何となく分かった。
カカシ先生を好きにならない女の人が居るんだ。
そんなの、勿体無いってばよ。
せっかくあんなにすごい人が好きになってくれているのに、断っちゃうなんて。
どんな人なんだろう。
『どんな女ですか』
それはやっぱり気になったみたいで、もう一人の人が聞いた。
『何か、長髪の黒髪で、黒い目と赤い唇の印象的な女だって聞いたな。相手にされないどころか、対象ですらないんだと』
聞いたその時は、どんな人だろうって一生懸命想像したけれど。
今なら分かる気がする。
きっと、この前の女の人みたいな人だってば。
でもカカシ先生、あの時断っていたから、きっともっとキレイな人だってばよ。
……想像、できないけど。
きっと、そんくらい、きれいな人なんだってば。
『見てみたいですね』
『俺は、その、相手にされていない時のはたけさんの様子を見てみたいね』
確かに、と笑って、二人の話題は別へと移った。
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