□純恋 2 (6/24〜完結)
2ページ/37ページ


****




『はたけさんって、いったい何人、自称恋人がいるんですかねぇ』

それは、いつだったか。

路地を通りがかった時に偶然聞いた言葉。

『さあね。否定もしないから、増える一方じゃないの。本人だって把握してないよ、絶対』

カカシ先生の恋人って言う話に、何故かひどく傷ついて、誰が話していたか確認できなかったけれど。

隠れるようにして、カカシ先生についての話を聞いていた。

それは、「カカシ先生」としての話じゃなかった。

「はたけカカシ」としての話だった。

『でも、そうするのは本命を隠すためだって聞きましたけど』

『本命?』

『はい、もし本命がばれてしまったら、その女が狙われるからって。はたけさん、有名だから』

『……本命、ねぇ……。信じられねぇが』

『やっぱりただの噂ですか』

『いや、案外その噂、本当かもしれないけどな』

『どっちですか』

聞きたくなかった。

けれど、気になって仕方が無かった。

『その本命に勝てる女が居るなら、喜んで本命を乗り換えるって、言ったらしいぜ』

『乗りかえって……そんなに簡単なんですか』

『いや』

男の人が、どうでもいいように、大きく伸びをする気配があった。

けれど、オレにはすごく重大な問題で。

『その本命に、相手にされていないんだと』

『えっ……、あのはたけさんでもおとせない相手がいるんですか。すごい、女ですね……』

〈おとせない〉の意味がよく分からなかったけれど。

言っている内容は何となく分かった。

カカシ先生を好きにならない女の人が居るんだ。

そんなの、勿体無いってばよ。

せっかくあんなにすごい人が好きになってくれているのに、断っちゃうなんて。

どんな人なんだろう。

『どんな女ですか』

それはやっぱり気になったみたいで、もう一人の人が聞いた。

『何か、長髪の黒髪で、黒い目と赤い唇の印象的な女だって聞いたな。相手にされないどころか、対象ですらないんだと』

聞いたその時は、どんな人だろうって一生懸命想像したけれど。

今なら分かる気がする。

きっと、この前の女の人みたいな人だってば。

でもカカシ先生、あの時断っていたから、きっともっとキレイな人だってばよ。

……想像、できないけど。

きっと、そんくらい、きれいな人なんだってば。

『見てみたいですね』

『俺は、その、相手にされていない時のはたけさんの様子を見てみたいね』

確かに、と笑って、二人の話題は別へと移った。







.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ