頂き物・リクエスト2

□あなたへと続く詩
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「――お前、しばらく休め」
「え……?」

沈黙の後に言われた事に、俺は聞き返した。
集中していなかったせいもあるが。

「任務に出ては、ここへ来て、ここで休み、また任務へ出て、戻り……。体調も優れぬはずだ。……しばらく休め」
「いえ、俺は……」

部下を傷つけてしまったという責任感はある。
しかし、例えは悪いが、使えなくなった忍びは2人だ。
この、ナルトと、サクラ。
自分の任務と、彼らの分までは働かねばなるまい。

術の激しさもあった。
しかし、ナルトの応急処置をし、俺と共に依頼主を送り届けたサクラは、里に着いた瞬間に、糸が切れたように泣き出した。
綱手様の所へ連れて行き、涙はすぐに止まったものの、今度は集中力が無くなった。
というより、放心状態の一歩手前と言っていい。
声かけに遅れて返事はあるものの、表情が硬い。
利発さは消え、心ここにあらずといった様子で、とても任務に出す事は出来ない。

「――お前の最近の任務だが……」
「……すみません」

言われることは分かっていた。
俺もサクラと同じ――とまではいかなくとも、集中力が散漫になっている。
術を結ぶ速度が遅くなった。
任務の内容も、与えられた位に見合う結果とは言いがたい。

「――嫌な、感じがするんだ」
「え?」

綱手様は、暗くなったであろう、カーテンの外へと意識を向けた。

「今回の任務――というより、まずはナルトの状態、サクラの状態が先ではあるか……」

何か、ひっかかる。
それは、俺もずっと感じている。
何か、見落としているような気がするのだ。
任務の内容。
任務の経過。
任務の結果。
全ては1つにつながっている。
当然である。
それが物事の事象というものだ。
全ての任務がそうである。



――しかし。



何かを見落としているのだろうか。



何かが、ひっかかる。



しかし、考えようとするが、すぐに疲れてしまう。
思考がまとまらない。

「――身体が疲れるとな、気力も落ちる。それくらいアカデミーでも教えているだろう」

もう忘れたか、と綱手様が茶化す。

「サクラは私が看る。お前はナルトを。……それから、休息を取るように」
「……しかし……」
「何、今の時期はたいした依頼は入らない。心配するな」

確かに、今の時期は大きな依頼は入りにくい。
例えば護衛にしろ、何か式典だったり儀式だったりというものは、大抵時期が重なるからだ。

眠り続けるナルト。
俺がここ数日使っていた簡易ベッドは、ナルトと同じものへと変えられていた。
任務に出ている間に、綱手様が入れさせたのだろう。

「そこで寝ろ」
「……綱手様……」
「この部屋で衣と住はまかなえるだろう? 食事は運ばせる」

終った点滴のチューブをナルトの腕から抜きながら、綱手様が言う。

「お前の今日からの任務は一日も早くナルトを目覚めさせる事、それから、これはゆっくりでいいが、ナルトを回復させる事だ。――それから、お前もな……」

言い残して、綱手様は部屋を出て行った。









――――
2008.5.6.
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