頂き物・リクエスト2
□あなたへと続く詩
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何がいけなかったのだろう。
これまで、何度も危険な任務はこなして来た。
暗部の時代の方が余程危険な目に遭ったはずだ……。
――確かに、気の緩みはあったかもしれない。
息抜き程度の任務だと感じた。
とても、簡単なものだと。
依頼者も、任務完了は『ゆっくりでいい』と伝えて来た。
和やかな雰囲気で――といえば忍び失格かもしれないが、敵の存在など在りはしないかのように、前半は何も問題は無かったのだ。
それが、夕暮れ。
薄暗くなってきてから、依頼者が無口になった。
それは俺達も一緒で、このナルトでさえ、口を噤んでいた。
一日喋りっ放しで、疲れたせいだろう。
どこかでテントでも張ろうかと言い出したのは、依頼者であった。
俺達に気を遣ったというよりは、自分が疲れただけの様子であった。
サクラとナルトがそれに同意した時であった。
契機は、1本のクナイ。
依頼者が悲鳴を上げた。
敵が、二人。
情けない事ながら、気配の察知すら出来なかった。
そこに、動揺が生まれたのか。
(……連携は、いつも通り……ほぼ、完璧だったはずだ……)
――後は、結界の巻物が開かれて、戦闘は終わったが……。
何であろうか。
何か、重要な事を見落としているような気がするのは……。
何故、こんなにも不安になるのか――……。
――いや。
俺は、眠り続けるナルトを見た。
不安にならないはずは無いのだ。
眠り続けるのがサクラだったとしても、俺はこうして看ていた事に変わりはないだろう。
――しかし。
「……ナルト……」
そっと、呟く。
ナルトの寝息は、規則的だった。
部屋の明かりを消すと、代わって、カーテンを通しての月明かりが周囲を照らした。
眠るナルト。
月明かりに、白い肌が浮かぶ。
長いまつげが守る瞳は碧く、澄んでいる事を俺は知っている。
笑みを作る事を得意とするその唇は、月明かりにいっそう紅く映えているかのようであった。
そっと、ベッドの脇へと両手をつき、身体をかがめる。
――いけない、と、分かっていた。
けれども。
自制心など、この動揺と不安の前に、疾うに無くなっている。
頬に感じるナルトの息。
「……ナルト……」
そっと、その唇に、自分の唇を押しつける。
柔らかく、温かく、それは俺に、ナルトの生命を伝えた。
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2008.5.12.