頂き物・リクエスト2
□あなたへと続く詩
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変化があったのは、それから三日後の事だった。
目を覚まし、身体を起こしてナルトを見る。
近寄ると、寝息が聞こえた。
「……ナルト……」
いつもの様に身体を拭いてやる。
きれいできめの細かな肌。
カーテンを開けると、ナルトの白い肌が輝いていた。
そっと、その肩に、首に、口付ける。
本当は、紅く印をつけたかったけれども。
何度思っただろう。
この子が、自分だけのものであればどんなにか幸せであろうと。
他の者が徐々にナルトに惹かれていく中。
見せつけるかのように、可愛がった。
班員として、仲間として、当然の域ではあったが。
何故か。
あの元担任に見せつけてやりたいと感じる程。
『オレ、イルカ先生だけは何があっても裏切らないってばよ』
笑いながらそうナルトが言ったのはいつの事だっただろう。
初めて自分を認めてくれた相手だと。
そう、何度聞いただろう。
何度、嫉妬に身を焦がしただろう。
「……俺は、お前が居てくれるなら……」
目を醒まして。
俺だけのものになるなら。
『最近ナルトはカカシさんに懐いてますね。ちょっと寂しいかな』
人の良い笑顔。
子供に慕われる理由が分かった。
けれども俺は。
――他の全てを裏切ったって良い。
他の何を捨てても良い。
(……もう少し、俺は常識のある大人だと思っていたけどね……)
そんな余裕、どこにも無い。
「……ナルト……」
閉じたまぶたに口付ける。
愛しい。
愛しくて、どこかおかしくなってしまいそうだ。
眠るその横顔。
光が差して。
(……地上で初めて天の者を見た者は、こんな気分であったか……?)
思って、笑った。
どこかでそんな神話を聞いた事がある。
地上へ遊びに来ていた天の者。
あまりに美しく、それを見た地上人は、その拘束の為に、大切な物を隠してしまったと。
それは、天の者であるという証。
天の者として生きられなくなったその者は、仕方なく、地上人と生活を始めた。
「……お前が天の者だというのならば……」
俺は、このままここで、お前を世話する事を望むだろう。
――それが、お前の為にならないと知っていても。
その神話の結末は、数年後に、天の者は隠された天の者の証を見つけてさっさと地上を後にしてしまうが。
残された夫、そして、地上人との間に出来た子供。
その子は様々な術が使え、神童とあがめられたものの、短命で直ぐに死んでしまった。
「……嫌な話だね、ね、ナルト」
そっと、髪を撫でる。
金色の髪。
天の者。
きらきらと、髪が光に透ける。
(そんな者がこの世に居るとしたら……)
「お前の事だよ、ナルト……」
帰したくない。
任務の度に思っていた。
そう、思い出しながら髪を、頬を撫でていた時だった。
「……ん……」
「っ!!」
微かに、ナルトが身じろぐ。
――そして。
「……せん……せ……?」
かすれた、小さな声が聞こえた。
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2008.5.21.