頂き物・リクエスト2

□Stay hugged.
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『先生、お風呂入っていいってば?』

学校から真っ直ぐ走って来たのだという。
ナルトは汗だくで、カカシを見上げた。
ぽたぽたと滴る雫。
ほんのりと染まる頬。
あの頃のナルトは、少女と見まがうほどであった。
額にはりついた前髪。
色素の薄いそれは、やや青みがかった眼差しとピンク色の唇に、妙な色香を漂わせていた。
ナルトの匂い。
それをあんなにも強く意識した事は無かったであろう。
まだ、異性の意識などした事はないのではないかというストイックさ。
それ故の、危なさと、魅力――……。

『明日から本番までは、自宅で勉強しなさい』

そう告げたカカシに、ナルトは不満げな声を上げた。

『何でっ?!』

自宅の方がコンディションを整え易いから、と言ったような、別の言葉を言ったような……。
――よく、覚えてはいないが。

それから約一週間。
毎日居た気配が無くなった事への違和感がカカシを呵んだ。
当時カカシと付き合っていた女性は、ナルトの存在をよくは思っては居なかったが。
その事がまた、カカシをイライラともさせた。
別れたのは、合格発表の前日ではなかったか。

『先生っ!! 合格したってばよっっ!!』

元気にカカシの部屋へと飛び込んできたナルト。
受け止めた腕を、離す事に苦労した――。



****




「えーっ、何でオレばっか?!」

明日から夏休み。
どこか浮き足だった教室の中、呼ばれたナルトは不満げに大きな声を上げた。
唇を尖らせるナルトに、担任であるうみのイルカは、確かに伝えたからなと念を押す。

「お前、また欠点だっただろう」
「う……、だってさ、だってさ、あの先生、意地悪な問題ばっかだってばよ」
「欠点はお前だけだ。基礎問題だろう! はたけ先生は基礎しか出さないと言われるくらいだぞ?!」
「え〜っ!! だってさ、数学ってよく分からないってばよ」
「とにかく、だ。お前、明日から一週間補修。数学教室へ来るように、と、はたけ先生からの伝言だ」
「え〜っ、せっかくの夏休みなのに……」

自分の席へと肩を落として戻っていくナルトを見ながら、イルカははたけカカシの事を考えていた。

イルカにとってカカシは、何を考えているかは分からない存在である。
しかし、飄々としながらも教育熱心である所はイルカの理想とする所だ。
生徒達からも、慕われている、というより、頼りになる先生としてあげられている。
それはナルトとて同じで。
あんな事を口ではいいながらも、時間にはきちんと席に着いているだろう。

(任せておいて、問題は無いな)

「さ〜、終礼するぞ〜、席に着け〜!」

イルカは夏期の課題を配り始める。






――――
2008.8.22.
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