頂き物・リクエスト2
□Stay hugged.
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ナルトが特殊な環境で育ったと言えばそうかもしれない。
彼の父親は有名な俳優であった。
母親は学生時代からの恋人で口外されておらず、婚約当時は大騒ぎになったものだ。
その頃俳優を目指していたカカシは、事務所の先輩で気さくな彼の宅に、その頃の友人、オビトと何度もお邪魔していた。
子供が出来たと、幸せそうに笑っていた2人を思い出す。
――しかし。
カカシは左目の付近にある傷へと触れる。
その事件は、今でもストーカーであったのか強盗であったのか判明はしていない。
一緒にお邪魔していた、オビト。
『カカシ、どけっ!!』
彼が、自分を庇って犯人の目の前に出た。
『!』
割れた硝子が、左目を掠って。
気がついた時には、カカシの目の前で、オビトが血塗れで倒れていた。
『……オビトっ!!』
息を飲む。
思考が一瞬止まった。
しかし我に返り、倒れた彼に駆け寄るよりも先に、カカシはナルトの父親、ミナトから腕を掴まれた。
『悪いけどね、カカシ君、ナルトをお願いするね』
焦っていた自分に、ミナトは微笑んでいて。
『さ、早く』
裏口から、裸足で逃げ出した。
まだ生まれたばかりのナルトを抱えて。
無我夢中だった。
何が起こったかも分からず、ただ恐怖ばかりがカカシを支配していた。
ナルトは泣いていたが、やがて、カカシの髪を引っ張って遊びだして。
恐怖からか、情けなさか、不安か、それとも別の理由か。
涙が溢れて止まらなかった。
まだ、ナルトは一歳にも満たなかっただろう。
やっと笑い始めたと、微笑んでいた両親。
自来也に見せるのだと言っていた。
『おじさん、助けて!!』
足の裏を泥だらけにして、まだ幼いナルトを腕に抱いて飛び込んできたカカシに、自来也は驚きながらも、何か思うところがあった様子であった。
『――この事は、忘れろ。後は何とかしておく。お前は……、……お前は……』
カカシには、帰る家が無い。
父親はある事業に勤めていたが、プレゼン失敗で、責任をとらされ、最終的には自害した。
会社の運命を左右する取引であったと言ってもいい。
生真面目であった父は、必要以上に悩み、苦しみ、最終的にはどこか心を病んでしまっていたのかもしれない。
そして、母親の行方は、それ以前に知らない。
『……お前は、わしが預かろう。それから……芸能界は、諦めろ』
その後、自来也はどこかへ連絡していた。
ナルトの名前が何度か聞かれた。
その間、カカシはナルトと遊んでいたが。
『カカシ、取り敢えず身体を洗ってこい』
『ナルトは?』
『もうすぐ迎えが来る。お前はゆっくり、まずは落ち着いて来い』
風呂からあがり、あてがわれた部屋で、ベッドに寝転んでいる時、誰かが自来也を尋ねてきた。
女性のようだった。
気にはなったが、ふかふかのベッドに、気が抜けてしまったのか。
いつの間には、カカシは深い眠りへと落ちていた。
――翌日には、ナルトの姿は消えていた。
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2008.8.23.