頂き物・リクエスト2

□だって仕方が無いじゃない
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面白くない。
何が面白くないかと云うと、言うまでもない。
ナルトの事だ。
ナルトはカカシの恋人である。
それは周知の事実、のはずであった。
なんだかんだとあったが、この年めでたくカカシ斑の仲間から恋人へと、やっと昇格したのに。

それなのに。
それなのに、だ。

ナルトの言う事と言ったら。

『えっ、今日はイルカ先生と一楽だってばよ?』

さも当然のように。
機嫌を悪くするカカシを不思議そうに、無垢な目で首を傾げてくる。

(俺が悪いみたいじゃないの)

『何で先生、怒るんだってば? イルカ先生ってば、オレの恩師てやつだってばよ? カカシ先生とはいつでも会えるってば』

いつの間にそんな物言いを覚えたというのか。
まるで、都合の良い恋人に対しての言い訳のようではないか。
カカシの気になるポイントと言えば、何故ナルトの中で、自分の地位というものがあの教師よりも低い位置づけかということ。
恋人より昔の恩師を大切にするなんて。
人がどんだけ自分を晒して『付き合って』なんて言ったと思ってるの。

(……まさか、本当にあの日だけ『付き合った』んじゃ……?)

考えて、カカシは青くなる。
いやいや、いやいや、そんな事は有り得ない。
『好きだ』と言ったカカシに対し、ナルトは確かに、少しだけ頬を染めて応えたのだ。
『オレも、先生の事好きだってばよ』

なのに。



「だからさぁ……、何で先生ってば、イルカ先生の名前出したらいつも機嫌悪くなるんだってばよ」

目の前で、半ば呆れた顔で自分を見ているナルトに、お前は事の重大さが分かっていないと、年甲斐もなく大声で叫びたくなったカカシであった。

「……う〜ん、ね、ナルト。俺達、付き合ってるんだよねえ?」
「へ、何言ってんだってば、改めて……」

あの日のように少し頬を染めて、ナルトが眉をひそめる。

「……つ、付き合ってる……てばよ?」

ごにょごにょと言うナルトに、その辺りの認識は間違っていないのね、とカカシは益々眉間に皺を寄せた。

「もう、変な事聞くなってばよっ」
「変な事?! 俺達が付き合ってるのが、変な事っ?!」
「せ、先生……、声、大きいってばっ」

慌ててカカシの口を塞ごうと両手を伸ばしてくるナルトが、カカシは面白くない。
カカシと付き合ってるのを隠したがるナルト。
自慢ではないが、カカシはもてない方ではない。
寧ろ、噂でも嬉しいからと言う男女が後を絶たない程なのに。

なのに。

何故この恋人はどこか余裕で、しかも恩師を優先するのだろう。
カカシの方が必死になって。

情けない、というか、悲しい。

(いや……本気で寂しいんですけど……)

カカシも、思春期真っ盛りの若い身体というわけではない。
そろそろ情欲云々は落ち着いては来たものの……。

(そういう事はおろか、キスさえしてないよ。……というか、よく考えれば、任務以外で手すら握ってない……?)

何コレ、お子さまのごっこ遊び以下じゃない。
今時お子さまだってキスくらいしてるよ。
いや、無邪気なんだから、そこは考えるべき所じゃないのむかもしれないけれど……。
でもさぁ……。

「先生? もういいってば? じゃオレ、イルカ先生と約束あるから」
「はっ?!」

この期に及んで、この子はまだそういう事を言い、直ぐさま姿を消した。

「……ナルト……っ」

カカシの中で何かがぐらぐらと揺れる。






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2008.10.5.
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