頂き物・リクエスト2

□だって仕方が無いじゃない
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「あ……ごめ……先生……」

どこか慌てたように、ナルトはやっと、そう声を出した。

「謝るのは、もういいから……」

謝られる度に、どこか悲しくなる。
一線引かれたような壁さえ感じてしまう。

(俺、お前が思うほど恋愛してきたわけでも、大人でもないんだけどね……)

自分ばかり必死になっているような気さえして、思わず心で苦笑したカカシである。
ナルトを見てみれば、何をそんなに恐がっているのか、身体を強張らせていた。
いつもの元気な様子など消えてしまっている。
そんなに怖い顔でもしているのかね、とカカシは息を吐いた。

「……もう、いいよ。ゴメンね」
「あ……」

カカシはナルトから離れる。
ナルトに触れたくて、ぎりぎりまで伸ばされたカカシの手は、しかし、ナルトに触れる事無く引かれた。
その手を追うように、ナルトの視線が動く。

「……せ、先生……カカシ先生……待って」
「……。……なぁに」

せめて、と優しく微笑んでいるものの、うまく笑えているかどうか。

「ちが……違うんだってば。……あの、ゴメンってば」
「……。……うん。謝らなくていいって言ってるでしょ」

何を謝っているのか分からない。
まるで一方的に振られているようで、カカシは今度こそ本当に苦笑した。

「あ……」

はっとしたように、ナルトが不安を表す。

「……ええと……、ゴメンね、ナルト。しばらく普通に出来ないかもしれないけど、気にしなくていいからね」
「!!」
「……いや、こんな事言う必要は無かったね、ゴメン。大人げなく動揺しているよ」
「あ……」

早く気がつくべきだったのか。
付き合っているという言葉にだけ安心して。
これだけ露骨に、分かり易い嘘で避けられていれば、もう既に振られていると分かりそうなものだが。

「ちっ、違うんだってばっ、先生……!!」
「おっと」

帰ろうとしたカカシは、突然後ろから袖を引かれて躓きそうになる。

「違う、先生……」
「ナルト?」
「違うんだってば、先生」
「ナルト……? 何……」

振り返ったカカシの前で、ナルトは涙を浮かべていた。
何を焦っているのか。
頬が真っ赤である。
泣くのを必死に耐えている表情だ。
いや、必死に訴えているのか。

「ごめんなさい」
「……ええと……、……うん」
「オレ、オレね」
「うん」
「思う事、あって……」
「……うん」

(……いや、そんなに改まって断られるのも、イタイというか……、困ったね……)

早々に立ち去りたいのに。
しかし、必死なナルトをもう少し見ていたい気もする。
これが最後になるかもしれないから。
そう思い、じっとナルトを見ていたカカシだったが。

「オレ、ないの」
「?」
「オレ、したこと無いんだってばよ!」



「え……、何が?」



思わず、素で聞き返してしまったカカシである。

「う……っ」

ナルトは今にも泣き出しそうな顔をしていた。








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2008.10.23.
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