牡丹
□いとしあい
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どうすればいいのか分からなかった。
突然告げられた別れに、まだ心は追いつかなくて。
「これがお互いの為なんだよ」
呟くように告げたカカシ先生の声は、どこか自分自身にも言い聞かせているかのようにも聞こえて。
「何で? そんなの関係ないって言ったじゃん!」
「……そうだったっけ?」
靴を履きながら視線を落としたまま。
カカシ先生はオレの顔を見ようとはしなかった。
「個人的にはしばらく来ないよ」
淹れたコーヒーからはまだ温かい湯気が立ち上っている。
口をつけられることのなかったそれは、じっとオレ達の息遣いを見守っていて。
閉まった扉を再び開ける勇気は無かった。
やがて、コーヒーの湯気がすっかり消えてしまっても。
俺は扉を見つめたまま、じっと、動くことができなかった。
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2012.12.13.