牡丹
□想い人
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「久しぶりにゆっくりだってばよぉ!」
休日の朝だった。
珍しく何の予定もなく、計画的な寝坊をしたオレは、遅い朝食をつついていた。
「買い物は夕方でいいや」
最近は、色んな人から予定を尋ねられることが多くなって。
だから、一日何も予定が無いって事は無かったんだけど。
たまにはゆっくりしたいと思って、今日は何も予定を入れなかったんだ。
『暇ならアンタも来る?明日、イノと甘味三昧しに行くんだけど』
昨日の帰り、サクラちゃんが誘ってくれたけど、家の掃除するからって断った。
『アンタ、うなぎ上りの人気とは反比例して、最近めっきり所帯じみてきたわよね……』
苦笑しながらサクラちゃんがオレに手を振る。
『ま、有名人は大変ね。またね。カカシ先生も、また明後日』
『うん、気を付けて帰りなさいね』
カカシ先生と一緒に、サクラちゃんを見送った。
『さて、お前も、気を付けて』
『はは、大丈夫だってばよ』
そのまま帰ろうとして。
ふと、カカシ先生がオレをじっと見ている事に気付いた。
『?何だってば?』
『いや、何でもないよ。それじゃあね』
カカシ先生は何故か少し笑って。
そのまま姿を消した。
カカシ先生、何か言いたかったのかなって思ったけど。
家に着く頃にはそんな事、すっかり忘れていた。
朝食も済んで、とりあえず部屋の空気を入れ替えようと窓を開けた時だった。
「ナルト!」
通りから声をかけられる。
「サクラちゃん?」
昨日、甘味処には行かないって断ったのに、誘いに来たんだろうか。
「おはよう、どうしたんだってば?」
のんびりと手を振ると、サクラちゃんはどこか焦ったように首を振った。
「すぐに綱手様の所に来て!」
「え?」
顔色を変えて、サクラちゃんが柵を飛び越えて来る。
「どうかしたんだってば?」
「私服のままでいいからすぐに来いって、綱手様が」
「そういえば、サクラちゃんも私服だってばね」
「早く来いって、シカマルが甘味処に呼びに来てね」
「え、そう、なんだってば」
サクラちゃん、こんな時間から甘味処に行ってたんだってば。
そっちの方がびっくりしていたり……。
苦笑しかけたけど。
サクラちゃんの言葉に、オレは笑みを消した。
「カカシ先生が大変なんだって」
「……え?」
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2013.1.15.