頂き物・リクエスト2

□こころつむぎ-カカシ-
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ナルトの足は、その腕と同じくなめらかで、程よい筋肉の弾力が感じられた。

「ナルト、くすぐったい?」

視線をナルトの足に向けたまま尋ねると、ナルトが首を横にふる気配があった。

「……気持ち、いいってばよ……」
「そう、良かった」

自然に頬がほころぶのが分かる。

きれいな、足だ。
指の爪も、形がそろっている。
マッサージをしながら、先ほどの事を思い出す。

『何でみんなオレの事知ってるんだってば?』

不思議そうに聞いてくるナルトに、しばし言葉を失った。

強く、優しい少年。
里からの評価は、それをたがえる事無く、ナルトの存在を必要なものとした。

『……この里でお前を知らない者なんて居ないよ』
『えっ、何でだってば?』

すかさず聞き返される、疑問の声。

『皆がお前を好んでいる』

そうだ。

皆が、ナルトを好意的に必要としている。

強さも。

優しさも。

一途さも。

涙もろい所でさえ。

全てが。



尊く、愛しい。



(……これは、俺の感情か)



『……俺も、例外ではない』

驚くナルトに、本当は、他の誰かがお前を見ているなど耐えられないと、そう、口に出したかった。

抱きしめ、例え偽りの情報であっても、お前は俺の傍に居たと口にしたかった。



『お前の手助けがしたいと、いつも思っていたよ』
『……あ、ああ、そういう意味か』

胸を撫で下ろすナルトに、少し悔しいと思う。
ほんの少しでも動揺を見せてくれればと、浅はかにも期待しての言葉だった。

『……俺がお前を好む理由を、その意味を、お前の好きにとっていい……』

小さく呟いた言葉は、俺のずるい本心だ。

子供じみた期待を、お前に託して。



けれど、その期待は意味が無かった事を知る。

『……先生……、タバコ……、オレのまわりで吸っていた人、……居た?』

すれ違った男性のタバコに、ナルトは反応した。

『タバコ?……いや、今は、誰も、居ないが……』

古い友人を思い出したが、ナルトの言っている相手が、もう一人居る、その可能性に頬が強張るのを感じた。

ナルトが関わった組織。
里の依頼で、俺がナルトに、深く、内部潜入をさせた……。



『……タバコは……嫌いだってばよ』



どこか大人びた顔をして。

ナルトはじっと地面を見つめていた。



『……タバコは……キスが、にがい……』



動きを止めたナルトに、俺を襲って来たのは、
自己防衛の恐怖だ。

『……何か、思い出したのか?』
『いや、オレ、何で……』

思い出さなくていいと抱きしめたかった。

あの組織の事を思い出すという事は、あの夜の事も思い出すということだ。

それを思い出し、ナルトが最初にいだくのはどんな感情だろう。



(……俺への、侮蔑の念……?)



侮り?

怖れ?

嘲り?

あの場所へ返せと言うだろうか。



(返さない……)



誰にも渡したくなどない。

お前が誰かの為に、その意識を向けるなど。

できることなら、この里の為にお前が動く事、それ自体、到底許容しがたいのに。

俺だけが、お前を見ている事が出来たならば。

そして。

俺だけを、お前が見てくれるなら。



ただひと夜。

切ない、痛みを持ったあの熱は。

俺の胸だけにしまい、ナルトが思い出す事はなくていい。

確かにこの、甘い体温をこの腕にいだいていた。

ただひと夜の夢。



『……カカシ、先生……』



ただ1度だけ、甘く囁かれた言葉も。



(その事実は、俺だけが知っていればいい……)



「……先生」
「うん、何?」
「明日、カカシ先生、サイと代わるって」
「ああ……」

醜い妬心をナルトに知られたくなかった。
顔を上げずに微笑む。

「サイとゆっくり、出ておいで」

そう答えると、ナルトは何も言わなかった。

沈黙に安堵しつつ、充分に自分の鼓動を整えて、俺はやっと、顔をあげる。



愛しい、その姿を目にする為に――。











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2013.6.22.
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