頂き物・リクエスト2

□こころつむぎ-サイ-
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いつかと同じように頬を染めるナルトに、自分でも抑えがたい衝動が起こった。

中身は、確かに僕が恋したナルトだ。



ナルトに触れて、僕の中で色々なものがその形を変えた。

止まっていた時も動き出した。

熱い、固まり。

そんなものが、僕の中にもある事を知った。
そして、甘く苦い痛みも。



ナルトが僕の事も忘れている。

毎日、ささやき続けた想いの言葉も。

全て。



(……また、いくらでも囁き続けよう)



ただ、悔しくて、歯を磨いている無防備なナルトの頬にキスをした。



それから。

ナルトに外出の許可が下りる。
夕方、ほんの1〜2時間だ。
誰が着いて行くかの話題で冗談めかして希望すると。

「いいよ。明日は俺がサクラを手伝うから。サイ、行ってきなさい」

意外にもカカシさんがそう言った。
それに反論して、サクラが大きな声を上げたけれど。

「ちょっとっ、カカシ先生、いいんですかっ?こんな変態と何も覚えていないナルトを一緒にしたら、ナルトがどんな目に遭わされるか!」
「……僕ってそんな印象なんだね」

ナルトへの純粋な想いは、邪まな欲をもって、僕を必死にさせる。

サクラの心配は杞憂に終わらないかもしれない。



面白いじゃないか。

僕にもまだ、夢中になれるものがあるなんて。

それが、君だなんて……。



「……このまま、花を手折って手元に置いたら……」
「さ、サイ……」
「……どうする、かな。……彼は……」



僕の任務はまだ継続中だ。
その組織の他国とのつながりを洗う事。
人身売買、時には仲間であっても切り捨てる、残忍な組織……とされている。

ナルト達は中心から。
僕は外部から。

その組織のリーダーを抑えることが任務の目的だった。

ナルトが記憶をなくした経緯は分からない。
しかし、確かにナルトは組織のリーダーに接触している。
組織の残党が、ナルトを血眼で探している事が分かったからだ。
組織のリーダーは、所在は不明だが、その残党の中に姿は確認されていない。

ナルトの記憶がカギを握っている。
一刻も早いナルトの記憶回復が望まれている。



(……表向きは、ナルトの養生)



しかし、蓋を開ければ、この病室での看病は、ナルトの軟禁と監視のようなものだ。

そして、夕暮れの散歩。

それは、ナルトを餌に、残党をおびき出す目的も含まれている。



『危険です』



こんなにはっきりと、綱手様に抗議したのは初めてかもしれなかった。



『敵の数がはっきりしません。街中で戦闘となれば、一般人を巻き込みかねません。リスクが高すぎる』
『……ナルトの記憶回復を待ちつつ、組織の調査を行うには、この方法が最適だ。その為に、カカシとお前をナルトに付けておく。お前達なら何かイレギュラーが起こっても、最善を、最速で行う事ができる』



記憶なんて戻らなければいい。

ずっと、かごの中に居てくれればいい。

そうすれば、ずっとこうしていられるのに……。



それなのに。



君の視線がカカシさんを追う。

この感じを、僕は知っている。



「ナルト、今日も天気はいいよ」
「サイ。来るの、夕方じゃないんだってば?」
「早く会いたかったからね」

言いながら、視線がカカシさんの存在を確認した。
泊まっている事は知っている。

「サイが来たなら、俺は別室で仕事を片付けてくるよ。そのままサクラと合流するから、サイ、後は頼んだよ」
「はい。ナルトは僕がしっかり見てますから」
「……サイ、オレ、別に1人でも大丈夫だってばよ?」












――――
2013.6.27.
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