頂き物・リクエスト2

□こころつむぎ-サイ-
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こころつむぎ-47頁より



篝ホクミを保護したが、ナルトの状態が落ち着くまではその事はナルトへは伝えない。

その指示は、僕とカカシさんの2人にのみ伝えられた。

傷つきやすく、優しい彼は、自分の状態の回復よりも、彼の事を気にするだろうから。
混乱した記憶の中で、その上に更に負荷をかける事は望ましくない。

それは、綱手様の困惑した表情からも見てとれた。

『……何てものを拾って来たんだ……』

綱手様が目を剝いたけれど。
そんな事、ナルトの笑顔に比べれば、何てことは無い。

『それで……手はずに問題は?』
『ありません。問題はありません』

そう伝えると、綱手様はとりあえずと、ナルトの居る病室とは一番離れた部屋へホクミを移した。
シズネさんとの2人かがりでの篝ホクミの治療は圧巻だったが、途中で邪魔だと追い出された。



ナルト。

君の為に僕は何ができるだろう。

君が笑顔になる為に僕が考え動く事は、本当に君の為になっているのだろうか。



けれど君の負担にもならす、君にって僕か何者でもない事が1番の恐怖なのかもしれない。



『ナルトとホクミを合わせる』

ナルトの記憶が戻り、安定している。
そう判断した綱手様は、そう指示を出した。
その命令に抵抗があったのは確かだ。

また一つ、ナルトの心を占めるものが出てくる。

そうしてまた一歩、ナルトが僕から離れていく。

籠の中に居た小鳥が、自分の世界へと戻って行く。

それは喜ぶべきこと。
そのはず、なのに……。



「毒で足は使い物にならなくなったが、またお前に会えて嬉しく思う、ナルト」
「えっ……と、ホクミ?」

篝ホクミの顔を見た瞬間、ナルトは驚き、そして、心の底から嬉しそうな顔をした。
泣きださんばかりに。

(君は、いつだって目の前の事に一生懸命だね)

君の行動ひとつで心乱される僕とは違って。

「ホントにホクミだってば?」
「俺以外の誰だと言うんだ。分からなければ、もっと近くに来い。……あの時のように、抱き締めてもいいぞ」
「ほ、ホクミ……」

組織の頭と親密になれとは言われていたが、いつもの通り、ナルトは相手と近づくことに成功したようだ。
近すぎるくらいに。

「ナルト、近付かなくていいよ。この男、資料とは全然違うね。こんなに軟派な男とは書いていない」
「今はただの男だからな。ナルト。もっとよく顔を見せろ」
「う、うんってばよ」
「っ……」

無意識に、ナルトが彼へと近づくのを止めようと、手を伸ばしかけた時。

「はい、そこまでね」
「わっ、カカシ先生っ?」

柔らかな風圧。



(そう、いつだってこうなるんだ)



もうこの感情は、嫉妬というよりは、諦めだ。

いつだって、カカシさんが、ナルトの傍に居た。
それは、ナルトが記憶を無くしてしまう前から。
オレの行動も、柔らかくだが、牽制されていた。

穏やかに会話が始まる。

「お前のおかげで、またナルトに会えた」
「ああ、お前を助けた事を、今、少しだけ後悔しているよ」
「えっ、カカシ先生っ?」
「それに、訂正がある。お前を助けるよう要請を出したのはナルトだ」
「そうか……。ナルトか」
「……想定内、ではあったけれどね」

呟くカカシさんの言葉は、本音を隠した言葉だろう。

(……知っている、カカシさんもまた、ナルトに魅かれていた事を)

だからこそ、いつだって傍に居たのだ。

ナルトを見守り、支える為。

柔らかな風の様に。

ナルトの心を撫で続けていた。



(僕は、どうすれば良かった?)












――――
2013.8.16.
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