頂き物・リクエスト2

□たとえばひとつの…
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終了のチャイムは、それまで眠たそうにしていた者達の目を覚ますには、充分の効力を持っていなかった。
そういうオレも、今しがたまでの微睡(まどろ)みの余韻が抜けきっていない。

「ナルト、寝ていたようなのでまわさなかったけど、次回使う資料だそうだよ」
「サンキュっ、サイ」
「礼には及ばないよ。その代わり……ふふ」
「今日は何だってばよ」
「髪、触らせて」
「またそれだってば?別にいいけど。ほら」
「ふふ」

サイはオレの席の前の席で、1番後ろのオレに、何かと気を使ってくれる。
おかげで、安心して居眠りが出来る。

……けど。

何だろう、いつも何かしらの要求をしてくる。
それは些細な事で、気にするような事ではないんだけど。



(よく分かんねぇんだってばよね)



害では無い。



「席につけー、ホームルーム始めるぞー」

イルカ先生はオレ達のクラスの担任だ。
怒ると怖いが、困った事があると親身になって助けてくれる、いい先生だ。

熱くてうっとうしいなんて言う人も居るけど、隣のクラスの激眉……ガイ先生に比べたら、まだ耐えられる熱さだ。
リーがガイ先生に心酔しているけれど、ガイ先生のクラスのテンテンに言わせれば、2人して「暑苦しい」の一言だそうだ。

同じくガイ先生のクラスのネジに至っては、極力関わりを避けようとしているらしい。
……が、努力虚しく、何かしらとリーのドタバタ劇に付き合わされている。
『リーと仲いいってばね』と、ネジに何気なく言ったところが、何とか組手というヤツでぶっ飛ばされた。
ネジの家は道場をしている。

何とか組手というヤツは、ネジのいとこのヒナタも使えるらしい。
というか、ヒナタの所がおおもとの本家らしい。

ヒナタは紅先生のクラスだ。
何とか組手を見た事は無いが、ヒナタがまともに喋っているのを聞いた事が無いのに、あんなアグレッシブな技が使えるのか不思議だ。
いつも真っ赤になって何かをごにょごにょと言っている(呟いている?)、あげくに倒れているイメージしかない。



ホームルームが終わり、部活の準備をする者、帰る支度をする者と、それぞれの予定をこなしていく中。

「……1週間補習ってマジであり得ないってばよ……」

オレは、目の前に広げたプリントを見てため息をついた。
サイの席に座り、オレの方を向いていたシカマルが苦笑する。

「手伝って貰ったっていいって言ってあるんだろ?面倒臭ぇが、教えるからさっさと済ませようぜ」
「神様仏様シカマル様だってばよ!」
「とりあえず、図書室行くか?」
「どうせ皆帰るから、教室でいいってばよ」

シカマルはアスマ先生のクラスだが、学年の中で1番仲がいい。
帰るのはいつも一緒で、学校行事も何かと一緒につるんでいる。

いつもやる気なさそうに授業中も寝ているらしいが、学力テストや知能テストでは、次々と記録を打ち立てていた。
学校始まって以来の秀才という噂もある。
『面倒臭ぇ』と言いながら、学生会を任されている。

口癖は『面倒臭ぇ』だけど、面倒見はいい。
困った時は必ず助けてくれる。
そんな安心感があったし、逆もまた然りと思っている。



「で、これを読んで答えろって事だな」

出されている課題は国語、だが……。



(指示語が示す部分はまだ分かるけど……)



「たったこんだけの文章で、この姉ちゃんの感情とか分からないってばよ。この文章の前後が読めるならまだしも、たった50行くらいで……」
「そうか?この女性は、ここでこう言ってるだろ」

言いながら、シカマルが線を引いていく。
それは数か所、印をつけられた。

「続けて読んでみな」
「……」

それを目で追っていって。

「あ……そうか」
「よし、次の問題」

シカマルの教え方は要領を得ている。
スマートにまとまりすぎて、実際に自分だけで解こうとした時、解けない事もあるけど。



小1時間ほどで、予定してあったプリントは終わった。

「せっかくの自由時間が補習で消えるなんて勿体ないってばよ」
「だったら普段から勉強しとけよ」
「しても分かんないってばよ」
「とにかく、さっさとプリント出して来いよ。待っとくからよ」
「分かったってばよ」



国語の教材質に向かう。

今の時間ならば、教員室よりそちらに向かった方が早い。

それは、2階の1番奥にあった。



……が。



あんまり気はすすまない。



(オレ、あの先生苦手だってばよ……)



寝ぐせだかセットだか分からない、西洋の血だか何だか分からない、銀色の髪。
噂では、どっかの王家の血を継いでいるとか何とか……。



(……って、そんな事あるかよ)



そう思うのに。

確かにその容姿は、それを連想させるものではあった。











――――
2013.11.8.
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