頂き物・リクエスト2

□630000打リク・光の中へ
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その微笑みは、偽物なのだろう?
その言葉も、態度も、全て。



(お前の行動は、俺の為の行動ではない)



「っ……」



カカシは息を飲む。



(――期待、しているのか?)



ナルトの行動が、自分を差しての行動だと。
その言葉が、表情が、仕草が、カカシのみに向けての行為だと良いと。

(……お前は……)



『お前に、頭を撫でて貰うのを喜び、抱き締めて貰いたいと思っておる』



(俺に、触れて欲しくて)

触れたくて、カカシの傍へ来ていたと。



(本当に……?)



記憶によみがえる、2人で居る時のナルトの様々な表情が、様子が、全て自分を向いていると。



(まさか)



しかし、だとしても、もう遅い。

――それを、もっと早くに知っていたら。

対応は違っていただろうか。
この成り行きは、変わっていただろうか。



(それでも、この先も、お前が俺を見ているというのならば)



――裏切らないと、何故言える?



偽りでは無かったのだとしても、やがてそれは変化していくだろう。

(例え一瞬の真実があったのだとしても、それの結末が裏切りなら、それは、もう、偽物でしかない)



「……裏切られたく、無かった……?」



呟いて、ぞわりとカカシの背が泡立つ。



(――怖い?)



裏切られるのが怖いと感じる程、視線を外されるのを苦痛と感じる程。
だから自分に目を向けさせていたかった?
自作自演で、彼を危険な目に合わせたとしても。



(ナルトの視線が、欲しかった……?)



男達に囲まれ、その影に姿を隠したナルトのその光景を思い出し、カカシはヒヤリと背を震わせた。
その瞬間のナルトの、恐怖を乗せた目の色が、何度も浮かんでは、カカシを責める。
しかし、ナルトはそれが、カカシの仕業とは知らないのだろう。
自来也も、ナルトには何も伝えていなかった。



『ナルトはお前を慕っておる。お前の微笑みが、何よりも好きだと笑っておった。カカシ先生は、俺のヒーローだと』



ナルトがカカシを恋い慕っていると、伝えた自来也の眼は静かで、その事実のみを、より一層際立たせていた。



「……ヒー……ロー……」



呟いて、再びナルトの笑みが浮かんだ。
屈託なく、カカシにじゃれ付き、楽しそうに笑う元気な姿が。



「っ……」



頬を伝う涙は、遅すぎる認識を、やっとカカシに与える。



取り返しのつかない事をした。
どれだけ悔いても足りないほどの過ちが犯される所だった。
いや、気持ちの上では、間違いは起こっている。



(俺は、何と言う事を……)



動揺は、カカシの身体を震わせた。
逸らされる視線を恐れるあまりに、自分から手を離そうとしたのだ。
最悪の方法で。

カカシは両手で顔を覆う。



(お前は、戻って来てくれるか)



そしてその時、同じ様にカカシを見てくれるだろうか。

ナルトのカカシへの想いは、壊れずそこにあるだろうか――。











――――
2015.1.16.
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