頂き物・リクエスト2

□650000打リク・その先に
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不意のキスは、キスというにはあまりにも短いものだった。
夕暮れの太陽が、俺とナルトの影を長く伸ばしていた。
辺りに人影はなく、このキスが誰かに見られている様子は無かった。

「……」
「……」

俺の肩に手を掛けて、ナルトは俺の前に回り込んで、俺にキスした。
それは一瞬で、すぐには何が起こったか分からなかった。

じっと見つめて来るナルトの眼。
何故、と問う気持ちが起こった。
しかし、尋ねる事はしなかった。
理由を問えば、この行為に意味を持たせてしまう。
この行動について、2人で考えなければならなくなる。



「……寒いね」
「っ……」



その事実、キスには触れず。
そう微笑んで歩き出すと、ナルトが息を飲む気配があった。

何でもない事。
そう言外に示しながら、別の話を振る。
すぐにナルトも俺の横に着いて歩き出した。



あれから何度か、ナルトと2人きりになった。
ナルトは、隙を見ては、何度かキスをしてきた。
未然に感じ取った分はやんわりと逃れたが、全ては避けられない。

(5度……)

キスを、した。
ナルトは何も言わない。
俺も、何も言わない。

(言えば、関係が変わってしまう)

時代の流れで、カカシ達の時代より上の世代には、独身者が多い。
それも、平安が訪れた昨今では、世帯を持つ事を推進されており、カカシも例外で無かった。
見合いをすすめられている。
しかも、他国の女性だ。
彼女は優秀な忍びの家系であり、木の葉としては新しい人材の確保にもなり、おまけに相手方がカカシを非常に気に入っている。
木の葉の里としては、ぜひとも、と言われている。
カカシも、それならそれでいいかとも思っていた。
相手にも一度会った。
拒否はしていない。
むしろ、何の感情も無い。
誰が相手であっても、それなりに平穏な生活が出来ると自負できる。

(きっと俺は、真っ当に恋愛する遺伝子をどこかで無くしてしまったのだろうね)

それなりに好意を持つ相手も居た。
セックスもする。
しかし、それだけだ。
誰かとそれ以上に深く発展した事は無い。

(ナルト……)

ナルトのキスの意味。

(きっと、そういう意味、なのだろうね)

ナルトの浮いた噂などは聞かない。
恋愛に疎いのかと思っていたが。

(……冗談のキス、ではないのだろう)

2人きりになるのを避けなければ。
これ以上の進展を、止めなければ。

(俺なんかに本気になってはダメだよ)

この先には、何も生まれはしない――……。















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2015.1.28.
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