頂き物・リクエスト2
□650000打リク・その先に
3ページ/11ページ
**
「あ、カカシ先生」
呼ばれたサクラの声に振り返ると、サクラとナルトが並んでいた。
夕暮れの柔らかいオレンジの光が、2人を照らしている。
「先生、今帰りだってば?」
「うん、お前達も?」
「私達は、今日はお休みで、甘味処に。イノが急に任務入っちゃって、ナルトに付き合って貰ってたんです」
「おかげで夕食入んないってばよ」
「あんたが食べ過ぎるからでしょ?」
「2人とも、いい休日だったみたいだね」
笑う2人に、自然とこちらも笑みが浮かぶ。
「そしたら、ね」
手を上げて2人に背を向ける。
「あ、先生、一緒に帰るってばよ」
「……」
背後で聞こえた声に、肩が揺れそうになるのをこらえた。
「うん」
振り返って微笑む。
「じゃ、私はここで。今日はありがとね、ナルト」
「おう、また明日」
サクラへとナルトは手を上げた。
2人きりを避けなければと思うが、露骨に否定するのは憚られた。
――そもそも、それは立場的にも仕事的にも無理ではあったのだが。
ナルトが嫌いでは無い。
むしろ好意的に感じている。
(――が、それでどうなる)
婚約を勧められるのは、子を作る為だ。
誰かと子供だけでも、と相談役から迫られた事もある。
(お前との間に子は成せない)
俺の子もであるが、ナルトとて里から熱望されている。
ナルトを受け入れられない、それが、1番の理由だ。
ナルトが遊ぶつもりで、冗談で迫ってきているのならまだ逃げ道がある。
しかし、ナルトの性格から、それは絶対に無いと言い切れる。
真剣に、俺に好意を伝えて来るだろう。
恋愛は出来るかもしれない。
しかし、それは里にとって望ましくない行為だ。
里の忍びとしては、受け入れられない。
受け入れられないと、分かっている――……。
「……でさ、先生」
「うん?」
「これから、うち、来ねぇってば?」
「え……」
足が止まった。
考え事をしていたせいか、不意の言葉に、いつものように流す事を忘れた。
「何か用事ある?」
「……」
用事があると、いつものように笑って断ればいい。
しかし、それが出来ないのは……。
(お前の目、が)
俺を見つめるその眼差しが、俺の言葉を奪っている。
拒否など期待していない、強い視線。
きっと、ここで否定しても、別の手で、ナルトは俺を誘うだろう。
俺が『応』と答えるまで、何度でも、何度でも――。
「……いいよ」
そこまで考えた俺は、いつものように微笑んだ。
「あ……」
俺の答えが意外だったのか、ナルトは驚いた表情を見せた。
期待しながら、拒否の言葉を受け止める準備をしていたのか。
(でも、拒否しても、一緒でしょ)
ナルトの粘り強い性格は、裏を返せばしつこいという事だ。
「俺は夕食食べたいけど、お前の所何かある? カップラーメンはご免だよ」
「あ、えと、じゃあ、何か買っていくってば?」
ナルトの瞳の奥に一気に広がっていく喜色に、気付かれない様にひとつ息を吐く。
――この、表情が、時々俺を落ち着かなくさせるのは、もう、分かりきっていた事だった。
→
――――
2015.2.1.