頂き物・リクエスト2
□650000打リク・その先に
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惣菜を適当に買い込み、ナルトの部屋へと行く。
扉の鍵を開けるナルトの指が、微かに震えている気がした。
いつもと変わらない様子を装っている表情にも、微かに緊張の色がうかがえる。
(そんなに、意識してるの)
2人きりになる空間。
きっと。
また、ナルトはキスしてくるだろう。
そして、その時俺は――。
「お茶沸かすってばよ」
「うん」
玄関に入り扉を閉めると、一瞬、俺を振り返って、ナルトは目を細めた。
それに気が付かないふりをして、部屋へと入る。
気付かないふりがうまくなった。
(意識していないふうを装うという事は、それだけ意識しているんだね)
――お互いに。
「……」
軽い眩暈に、首を振る。
室内は整頓されていた。
以前のナルトの部屋とは別人の部屋のようだ。
部屋の片隅に積まれた、プレゼントなのであろう、箱の山に苦笑が漏れる。
(それだけ、年月が過ぎたという事だろう)
イタズラでしか自分を表現できなかった子供は、今や里の英雄として、里に居なくてはならない人となった。
日夜、ナルトに声を掛けようと、里の女性、男性問わず、皆が躍起になっている。
時代も手伝ってか、その人気ぶりは、時折はた迷惑な状況を作る時もあった。
人ごみが、一般人の足を止めさせ、さらに人ごみを作る。
どうしようも出来なくなっていたのだろう。
『あ、カカシ先生、待ってたってばよ』
人に埋もれるナルトの前を通りかかれば、ナルトが、さも約束していたように俺に寄って来た。
『悪ぃ、先生、逃げるの手伝って』
こそこそと耳打ちされた言葉に、苦笑した事も何度あっただろうか。
――そんなナルトが、何故俺に執着するのか。
(理由は分からないが……)
「そんなに店に居たの」
「昼ご飯食べてちょっとしてからだから……4時間くらい」
「そりゃ、お前の腹も膨れるだろうね」
「サクラちゃんが食べきれなかった分も貰ったから。食べ過ぎたってばよ」
夕飯を殆ど食べなかったナルトに尋ねれば、ナルトは明るく笑った。
「先生、ゴミ、ここ入れてってば」
袋を渡され、台の下に寄せていた空の容器を取ろうと身を屈めた俺の視界に、ふとナルトの足が見えた。
顔を上げると、直ぐ傍までナルトが来ている。
(逃げ場は、無いね)
予測されるその行動に、俺は目を細めた。
肩へと手を伸ばされ、そのまま顔を寄せられる。
(6度目の、キス)
ついばむように触れ、すぐに離れていく――はずだった。
いつものように。
それは一瞬で終るはずだったが。
「っ……?」
俺の肩を掴むナルトの手に、力が入る。
→
――――
2015.2.5.