頂き物・リクエスト2

□650000打リク・その先に
4ページ/11ページ




***



惣菜を適当に買い込み、ナルトの部屋へと行く。
扉の鍵を開けるナルトの指が、微かに震えている気がした。
いつもと変わらない様子を装っている表情にも、微かに緊張の色がうかがえる。

(そんなに、意識してるの)

2人きりになる空間。

きっと。
また、ナルトはキスしてくるだろう。

そして、その時俺は――。



「お茶沸かすってばよ」
「うん」

玄関に入り扉を閉めると、一瞬、俺を振り返って、ナルトは目を細めた。
それに気が付かないふりをして、部屋へと入る。

気付かないふりがうまくなった。

(意識していないふうを装うという事は、それだけ意識しているんだね)



――お互いに。



「……」

軽い眩暈に、首を振る。



室内は整頓されていた。
以前のナルトの部屋とは別人の部屋のようだ。
部屋の片隅に積まれた、プレゼントなのであろう、箱の山に苦笑が漏れる。

(それだけ、年月が過ぎたという事だろう)

イタズラでしか自分を表現できなかった子供は、今や里の英雄として、里に居なくてはならない人となった。
日夜、ナルトに声を掛けようと、里の女性、男性問わず、皆が躍起になっている。
時代も手伝ってか、その人気ぶりは、時折はた迷惑な状況を作る時もあった。
人ごみが、一般人の足を止めさせ、さらに人ごみを作る。
どうしようも出来なくなっていたのだろう。

『あ、カカシ先生、待ってたってばよ』

人に埋もれるナルトの前を通りかかれば、ナルトが、さも約束していたように俺に寄って来た。

『悪ぃ、先生、逃げるの手伝って』

こそこそと耳打ちされた言葉に、苦笑した事も何度あっただろうか。



――そんなナルトが、何故俺に執着するのか。



(理由は分からないが……)



「そんなに店に居たの」
「昼ご飯食べてちょっとしてからだから……4時間くらい」
「そりゃ、お前の腹も膨れるだろうね」
「サクラちゃんが食べきれなかった分も貰ったから。食べ過ぎたってばよ」

夕飯を殆ど食べなかったナルトに尋ねれば、ナルトは明るく笑った。

「先生、ゴミ、ここ入れてってば」

袋を渡され、台の下に寄せていた空の容器を取ろうと身を屈めた俺の視界に、ふとナルトの足が見えた。
顔を上げると、直ぐ傍までナルトが来ている。



(逃げ場は、無いね)



予測されるその行動に、俺は目を細めた。

肩へと手を伸ばされ、そのまま顔を寄せられる。



(6度目の、キス)



ついばむように触れ、すぐに離れていく――はずだった。

いつものように。

それは一瞬で終るはずだったが。



「っ……?」



俺の肩を掴むナルトの手に、力が入る。













――――
2015.2.5.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ