頂き物・リクエスト2

□670000打リク・追憶
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ナルトの失踪が告げられてから、更に3日が経とうとしていた。
依然として、その手がかりを掴むには、困難があった。

あの日の夜、俺は長い時間、夜空の下で呆けていた。

(あの時俺は、何を考えていた?)

ナルトの事――そうだ、ナルトの事だ。
優しい時間を思い出し、それを動かそうとしたナルトに、ただ保身の思いから、行動を拒絶した。
それはきっと、ナルトにしてみれば、ナルトの行動だけではなく、想いの全ても拒絶されたと感じただろう。

(後悔……したところで)

現実は変わらない。
ナルトは傷ついたであろうし、俺に嫌われたと思ったであろうし、ナルトが現在行方不明な事も、また、変わらぬ事実だ。

(あの日、俺がナルトのキスを受け入れて、もし……)

互いの、どちらかの部屋へと一緒に行っていたら――……。



「――カシ、カカシ! 聞いているのか?」

「っ……」



綱手様の厳しい声に、俺ははっと顔を上げた。
ナルトの捜索会議。
シカマルにサクラ、シズネさんに綱手様、それから俺がこの場には集められていた。

「すみません」
「何か気になる事でもあるのか? ああ、その夜、ナルトと一緒に居たと言っていたな」
「はい。時刻としては、日付が変わるかどうかという刻まで――」
「真直ぐにナルトは帰ったのか?」
「――何か予定があるようには言っていませんでした」
「まあ……、そんな時間から、任務でもない限りは、帰って休むだろうな」

既に国境前までは捜索網が張られており、隣国各国に、捜索の為の立ち入りの依頼書も送られている。
ただ、ナルトの捜索だという事は、五影のみが知る所で、各国への表向きは、抜け忍の捜索ということになっている。

「……でも、ナルト、本当に自分で出て行ったりはしてないのよね……?」

サクラが不安を口に出してしまうのは、サスケの一件があるからだろうか。
現場の見取り図に、シカマルが首を振った。

「それは無いだろう。事件、の可能性が高い」
「そうだな。元より鍵を掛け忘れる事も多かったようだが」
「そうですね」

シカマルの言葉に綱手様が同意し、俺も頷いた。

「俺も何度か、注意をした事があります」
「しかし、あのナルトに危害を加えられる者なんて――」
「確かに、難しい事よね」

シカマルの言葉に、一同が首をかしげる。
確かに、今のナルトは、里の中でもトップクラスの実力を持っている。
それに加えて、ナルトに危害を与えようなどと考える輩が、果たして里に居るかどうか。

(居ない、だろう。今は)

一歩間違えれば宗教のように、ナルトは一部では神格化とまごう程の支持を集めている。

「里外の者の仕業か。だとすれば、目的は何なのか」
「しかし、ナルトを盾に取ったところで、条件が見合わないですね。殆ど意味は無い」
「ああ、それに加え、妙だ」

国境の警備には、今の所、何も引っかかっていない。
加えて、周辺国家との関係は、極めて友好的で、これまでにない程良好だ。
この上で、その均衡を崩すような攻撃をどこかが仕掛けて来るとは考えにくい。
国家規模では無く個人単位であったとしても、ナルトを連れて行くには、それなりの人数が必要だろう。
時刻の所為もあるのか、そのような集団は見られていない。
言い合う様な声も、周囲では聞かれていない。

(……ナルトは、自ら出て行った訳では無い……それが、一番の謎だ)

再び、沈黙が室内を満たした時だった。

「綱手様!」

突然、室内に暗部が姿を現した。

「見つかりました!」
「何っ?」
「ナルトです! 国境付近の山林にある洞窟内で、倒れているのが発見されました! 生きています!」
「「「!」」」

皆が一様に知らせに来た暗部を見つめる。

「っ……」
「綱手様! 指示を!」
「あ、ああ……!」

息を飲む綱手様に声を掛けると、彼女は頷きながら戸口を指さした。

「意識及び外傷の確認ののち、直ぐに保護を! 私の所へ連れてこい! 医療忍者を2名連れて行け」
「はっ」

暗部が消えた後を見送り、俺は口を開いた。

「術師の手配をします。何かの術が施されているかもしれない」

ナルトを攫った者が、ナルトを媒介にした攻撃を企んでいるとも限らない。

「サクラは救急器具及び部屋の確保を。シズネさん、一緒にお願いします。シカマルは俺と現場状況の確認に。サイも現場に行っているはずだ」
「はい」
「了解」
「――そのように、してくれ」

綱手様に指示を仰いでいながら、2人に指示を出した俺を咎めることも無く、綱手様は俺の言葉に頷いた。
サイも今回の事件については知っている。
空からの捜索に有益という事で、この場にはおらず、既に捜索に駆り出されていた。
日向のどちらかが居ればもっと早かったのかもしれないが、あいにくと2人とも他国へと用事で出掛けている。



現場よりも、まずナルトの顔を見たいと思った。
怪我は無いか、意識はどうなのか。

(それに――)



あの夜の事をどう思っているか。



(今はそんな状況では無い)

解っているのに、現場へと急ぐ足が速度を増すのにつれて、気持ちはあの夜ナルトと別れた分岐の道へと向かっていった。



「あ、あそこみたいですね」

シカマルの声に、走る速度を落とした。
暗部が1人、洞窟の入り口に立って、俺達へと合図を送る。













――――
2015.7.2.
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