ナルト・カカシ誕生日
□2015.ナルト誕生日
2ページ/10ページ
青年はニヤリと笑った。
ゆったりと口を開く。
「他に誰が居る。お前、別に男でも連れ込んだと?」
「いっ、いやいやいや、おかしいってばよ」
ナルトは後ずさる様に身を引いた。
「だって、お前、外に出てくる時は、いつものでかい図体で――」
「そのまま出てきたら、お前の部屋が吹っ飛ぶだろうが」
「だ、だからって……って、お前、人間の姿とれるのかよ!」
「お前のチャクラを少し頂いてるぞ」
「いやいや、そういう問題じゃ……ってか、声っ、声が」
「ああ――、この身体に合わせた声になっているはずだ。本来の身体とは、声帯も違うからな」
(何か、すげーエロい声なんだけど……!)
話し方すら、妖艶だ。
言葉を失ったナルトに、九喇嘛は再び面白そうに笑う。
「――どうだ、せっかくだからな、楽しい事でもやるか――?」
「ひゃっ」
身体を寄せてきた九喇嘛に不意に抱き寄せられそうになり、ナルトは慌てて距離を取った。
「いっ、いやっ、いやいやいや、ダイジョブ、大丈夫……遠慮するってばよっ」
「くくっ」
「ってか、人の姿とれるなら、最初からなれば良かっただろっ?」
そうする事で、これまでの戦いの様相も変わっていたかもしれない。
「――それは……、無理だったな。お前の意識と、俺の意識が同化しねぇと……まあ、細かいところはどうでもいいじゃねぇか」
ただ楽し気に笑っているだけの九喇嘛の様子だったが、その姿は見た目相応の色香が――いや、それ以上の色香が彼を包んでいる。
(……九喇嘛ってこんな感じだったっけ……?)
ただ人の形をとっているというだけで、喋り方や性格が変わった訳では無いのに。
人の形をとっているというだけで、随分印象が変わってくる。
「さて、せっかくだからな、ここでたっぷり話を聞いてやる」
「や、いや〜……明日の為に寝ようかな」
「ふん」
再び笑った九喇嘛は、案内してもいないのに、ナルトのベッドへと上がった。
「お前何してんだってばよ」
「寝るんだろう?」
「いや、それ、俺のベッド……」
「ほら」
寝ころび、片手で頬杖をついた仕草で九喇嘛がナルトを呼ぶ。
「ほら、て、何だってばよ」
警戒するナルトに、九喇嘛はにやりと笑った。
「来い。お前も床で寝たくはないだろう」
「いやいやいや、お前が床で寝ろよ」
「客人を床で寝せるのか?」
「誰が客人だってばよっ」
「何度もお前の中に入っただろう? 今更、何を恥ずかしがる。お前のあられもない姿も、何度も見たが」
「っ! おまっ、お前っ、イカガワシイ事みたいに言うなってばよ! 普通に言えよ!」
「ほう……」
九喇嘛は少し驚いた様に片眉を上げた。
「ここは明るい。お前のそんな顔も見れるのか」
「そっ、そんな顔っ?」
「頬が紅い」
「!!!! みっ、見んなっ」
「くくっ」
再び目を細めた九喇嘛は、やや強引にナルトをベッドの上へと引っ張り上げる。
身体がナルトよりひと回り程大きい。
ベッドに倒れ込んだそのまま、ナルトは九喇嘛の腕の中へと収められてしまう。
(あ……)
初めてのその感覚は、ナルトが全く知らないものだった。
ただ抱き寄せられるのとは違う。
それだけならば、これだけも友人とあったし、カカシからも抱き寄せられた事はあった。
しかし、包み込まれるのは初めてだ。
それでいながら、遠い昔、ナルトの記憶にすら残っていない遠い昔に、この感覚を体験したような気がする。
安心する、優しい感情、感覚。
九喇嘛の体温の温かさが、伝わってくる。
もともと獣である所為なのか、体温はナルトよりもやや高い。
(熱い……)
「……」
「な、何だってばよ。お前、急に黙んなって……」
「いや――」
呟いた九喇嘛の声は、予想以上にナルトに近く、その吐息がナルトの耳にかかり、ナルトは少しだけ身を縮めた。
それを抱き直すように、九喇嘛の腕がナルトの肩を撫でる。
「――お前の匂いを、初めて嗅いだ」
「なっ……ちゃんと風呂入ってるってばよ」
「ああ、良い匂いだ」
「おま……恥ずかしい事言うなってばよっ」
「おい、暴れるな」
再び楽しそうに九喇嘛がナルトを抱き直す。
「お前の体温も。……温かいな」
「……恥ずかしいヤツ……」
顔をしかめながらも、次第にナルトの瞼が重くなっていく。
「……記憶に残る、楽しい誕生日にしてやろう」
ふと呟いた九喇嘛の声が部屋に響く頃には、ナルトは既に寝息を立てていた。
その寝顔を見下ろす九喇嘛の表情は、優しい。
→
――――
2015.10.12.