ナルト・カカシ誕生日

□2014.一緒に
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一緒に






「そろそろなあ、お前、家族が欲しいと思わないのか」
「ああ……」

綱手の言葉に、ナルトは、もう何度目かの返事をする。

「まだいいってばよ」
「だがなあ、お前もいい年だろう。もう結婚できる年だぞ。子だって、里の為には、皆が望んでいる事だ」
「……火の意志は、里の子ならば誰でも持ち得る事だってばよ。俺一人の子供を望んだって……」
「お前の子だから、皆が望むんだ」
「でも俺……」

綱手からだけではない。
ナルトは、様々な相手から、跡継ぎを作るようにと、催促を受けている。
だがナルトは、頑としてそれを受け入れなかった。

「家族を作れ。そうすれば自ずと子も欲しくなるだろう。最悪、結婚せずとも、お前の子が欲しいと思う者は大勢居る。子だけでも、作れない訳では無い」

やや切迫した様に、穏やかではない事を言い出した綱手に、ナルトは首を振った。

「……家族なら、もう居るってばよ」
「何っ?」

綱手が身を乗り出す。

「どこの誰だ、そんなにめでたい事を、何故隠していた」
「……」

詰め寄られ、ナルトはひとつ息をついた。

「その人と、決めている。もし、何らかの事情で親が居ない子とか居たら引き取ろうって」
「……子が、成せない相手なのか」
「……」

綱手の深刻な顔に、ナルトはもう一度息を吐いた。

「子供が作れないというか、うん、作れない」
「……それは……」

綱手は考えるように言葉を切る。

「試したのか。まだ結婚せずに、そのような事を……」
「試すまでもないってばよ」
「? どういうことだ」
「――先生」
「教師、なのか? それとも、結婚経験者で、子供が成せなかった相手か?」
「カカシ先生、だってばよ」
「? ……どういう、意味だ。何故今カカシが……」
「俺、カカシ先生が好きだってばよ」
「なっ……」

今度こそ、綱手は完全に言葉を無くした。

「家族なら、カカシ先生がそうだってばよ。一緒に住んでる。それに……」

言いにくそうに、言葉を切った後、ナルトはまっすぐに綱手を見た。

「そういう事、も、している。キスも、それ以上も」
「っ……」

大きく目を見開いたまま、綱手は息を飲む。

「俺は、カカシ先生以外に、恋愛感情を持つつもりもないし、そもそも持てない。どこかおかしいと言われればそれまでだけど、変えるつもりは無い」
「……だが……」

否定の言葉を訴えようとする綱手だったが、言葉が出ない。
衝撃は、大きい。
里の他の者――それもかなりの人数から、ナルトが家族を持つように、子を成すようにと説得して欲しいと頼まれた綱手だった。
綱手自身、それが望ましいと、必要な事だと認識していた。
どんな相手だとしても、多少は目を瞑ろうと、バックアップしようと覚悟があったが。
思いもよらない相手に、綱手はただ首を振る。
確かに、子が出来る訳では無い。

「祝福してくれとかは言わない。反対するのも分かる。だけど、何回でも、何時間でも何日でも、俺がカカシ先生をどれだけ想っているか、伝える覚悟はある」
「お前は……それでいいのか」

やっと綱手の口から出た言葉は、精一杯、ナルトを擁護した、譲歩した言葉だった。

「子孫が欲しいと、血を残したいと思わないのか?」
「……それは、ちょっとあるけど」
「ならば、今からでも遅くない」

綱手の言葉に、ナルトは首を横に振る。

「カカシ先生がいいんだ。……カカシ先生を、愛している」












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2014.10.10.
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