ナルト・カカシ誕生日

□2014.お前がいい
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お前がいい






「また、待ちぼうけ?」

ぼんやりと眺めていた空に影がかかり、視線を動かせばサイが呆れた顔をしていた。

「カカシさんなら、さっき、別の店から出てきていたけど」

そう伝えるサイの表情は不機嫌だ。
カカシ先生は、また、誰かと一緒だったのだろう。
俺より、優先する別の誰かと。

「はっきり約束した訳じゃないから、別にいいんだってばよ」
「それ、何度目? いい加減、目を覚ましたら」
「……ははっ」

厳しいサイの言葉には、尤もだと頭のどこかで分かっている部分もある。
でも、そう出来ないのが、厄介なこの気持ちで。

「それでも、好きなの」
「……ああ、好きだってばよ」
「……」

サイがため息をつく。
もう何度もやりとりして来た光景だ。
サイの溜め息にも慣れた。
カカシ先生から約束をすっぽかされるのに慣れてしまったように。

俺とカカシ先生は付き合っている。

――多分。

でも、カカシ先生が特定の相手を作らないのは分かっていた事だし、明確に、付き合っている、という言葉や証拠を貰ったわけでは無かった。
ボディタッチもキスまでだし、それ以上なんて、そんな気配も無い。

今日も、『明日天気良さそうだから、外出日和だね、どうする?』なんて言葉をカカシ先生がくれたから、俺ばかりが張り切って待っていただけだ。

声を掛けられたのはサイだけでは無かった。
ちょっと前に、シカマルにも同じ事を言われたばかりだ。

『お前よくそんな面倒臭ぇ奴と付き合えるな』

シカマルが不機嫌そうに首を振って。
それでもいいのだと伝えたばかりだ。

「でもさ、明日って……」
「?」

サイが言葉を切り、何かを考えるように宙へと視線を漂わす。

「分かった。ナルト、もう、ここで、ケジメつめようよ」
「え?」
「カカシ先生が、ナルトと付き合う気があるのか。このまま続けていく気があるのか」
「いや、それは……」

困る、と口の中で呟く。
俺がこうして待っていられるのは、曖昧な関係だからというのもある。
明確にして、はっきりと、必要ないと言われたら……。

「そんな事、しなくていいってばよ」
「これは友人として、やっぱり決行させてもらう」
「何、を……」

厳しい顔をした後、サイはにこりと微笑んだ。
いつもの表情で。

「今日一日、僕に付き合いなよ」
「いや、でも俺、カカシ先生と……」
「いいじゃない。たまにはナルトがすっぽかしてやったら」
「それは出来ないってばよ」

そんな事をして、本当に手を離してしまわれたら。
カカシ先生に憧れて、少しでもカカシ先生の傍に居たくて。
俺の行動は、ようやっと、カカシ先生と特別な関係を持てるようになった。
だから、この関係を手放したくは無い。

「……もう君も、充分に、憧れられる存在なんだけどね」

サイが溜め息をつく。

「――ナルト、今、君、自分がどんな顔しているか分かってる?」
「別に、いつもと変わらないってばよ」
「来て」

サイは強引に俺の手を引くと、通りの店のショーウインドーの前へと連れて行った。

「見て」
「っ……」

そこに映ったのは、今にも泣きそうな俺の顔で。
サイが俺の隣へと立つ。
そして、通りからは見えない様に、俺の手を握った。

「……そんな顔をしていたら、彼氏じゃなくても抱きしめたくなるよ」

低い声で。
サイが俺の耳元へと囁く。

「このまま、君をさらおうか」
「サイ……っ」
















――――
2014.10.11.
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