ナルト・カカシ誕生日

□2014.お前がいい
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手を引かれ、屋根の上へと移動する。
そのまま、どこかへと走り出す。

「サイ、どこに」
「どこでもいい」
「え?」
「カカシさんが居ない所ならば、どこでもいい」
「それは困るってばよ」

そう言って足を止めたのは、訓練所がある林の中だ。
通りからは全く見えなくなる。
俺が足を止めると、サイも足を止めた。
サイが振り返る。



「あ……」



俺を見つめる眼。

その感じを、知っていると思った。



(時々、カカシ先生が俺を見る時、そんな目をする)



心臓が鳴る。

息が苦しくなる。

カカシ先生が俺を見るように。



サイは少しだけ目を細め、俺を見つめていた。
それは少しの表情の違いなのに、妙に色香があって。

カカシ先生に捕らえられた瞬間と、感じが似ていた。

サイが俺に近寄る。
俺の頬を撫で、顔を近づける。

「――今日と明日、僕のものになりなよ」
「え……」
「拒否は無しだよ。そうでなきゃ、君は間違いなく、他の誰かに奪われてしまう。そんな危うい目を、君はしている」
「何を、大げさな」

笑うけれど。
カカシ先生と同じ錯覚をサイに持ってしまう辺り、サイの言葉も正しいのかもしれない。

「約束して。今日と明日は、カカシさんの呼び出しに応じない、話もしないと」
「それは……」

出来ない、と言おうとしたけれど。
それより前に、サイが俺の頬へとキスを落とした。

「守れなければ、強引に君を、ナルトを奪う。取りあえずは、身体を、ね」
「!」

息を飲む俺に、サイはいつもの様に笑った。

「という訳で、これからデートしようか」
「……」



是が非でも逃げ出さなかったのは、頭のどこかで、カカシ先生は俺の事を本気ではないと分かっていたからだ。
予定を入れたカカシ先生と同じように、俺も予定を入れて、何食わぬ顔をして、平静を装いたかったからだ。



街を歩いて、買い物をして。
食事をして、また街を歩いて。
サイが俺を部屋へと送って来た時間は、もう既に遅いと言われる時間だった。

「遅くまでゴメンね。でも、このまま直ぐに眠れるよね。また明日来るから」
「……ありがと、てばよ」

一日一緒に居て。
サイはいい恋人になるのだろうと思った。
相変わらず、ズバリと言いにくい事を言うけれど。
でも、それがいいと思う。



サイを見送って、扉を閉めようとした時だった。



「――ナルト」
「っ?!」



不意に声を掛けられ、飛び出しそうになった悲鳴を辛うじて飲み込む。
顔を上げると、サイが帰って行った方向とは別の方向に、誰かが立っていた。

月明かりが照らす。



「……カカシ、先生……」
「……」



私服で。

何気なく立っているだけなのに、それだけでかっこいいと思ってしまう。

それなのに。

居たたまれないこの気持ちは何だろう。

胸が、苦しくなる。
鼓動が、早くなる。



「どうし……」



言いかけて、サイから言われた言葉を思い出す。
カカシ先生とは話をするなと。
守れなければ、サイは俺の身体を奪う、と。
恐らくは、俺が思う通りの意味で。



「……」



カカシ先生と目が合う。
カカシ先生は、表情の読めない顔をしていた。
その表情も、何度か目にした表情で。
俺になど興味が無いと、言っている目だった。
堪えられず、目を背ける。
そのままカカシ先生へと背を向け、扉を閉める。

けれど。

「っ……」

閉まる前に、カカシ先生が扉へと手を掛けた。
そしてそのまま、俺をカカシ先生の身体ごと、強引に玄関へと押し込む。





















――――
2014.10.11.
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