ナルト・カカシ誕生日

□2014.誕生日ですから
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誕生日ですから






「――で? 何の御用ですか」



丁寧なカカシの口調は、その表情に相応しい声であったが、その場の雰囲気にはそぐわないものだった。

「どうして。決まっているでしょ。ナルトの誕生日じゃない」

立ち竦むカカシの前でゆらゆらと揺れているのは、恐らくは、いや、高い確率で、四代目火影だ。

「ナルトの誕生日、という部分は否定しませんが、呼ばれもしないのに、何故、目の前で宙を漂っているのかを、尋ねているのですが」

言葉を切りながら、丁寧に、言い聞かせるように伝えるカカシの姿は、彼の過去の殺伐とした姿を連想させもする。
それは、相手が懐かしい相手だからか。
己の若い頃を思い返させるからか。
はたまた、ただのフラストレーションか。

「誕生日じゃなくても、お祝いは大勢でワイワイする方が楽しいでしょ」
「お祝いするってばね!」
「あ、ナルト、これね、自来也先生から預かって来たんだけどね」
「会心の最新作とか言っていたから、きっと素晴らしいものよ」
「――まずは最後までつっこませろ! そこの夫婦!!」

冷ややかなカカシの声は、そこに、明らかな不機嫌を隠そうともしていない。
例えそれが、彼の元上司だとしても。
過去と変わらず、尊敬の念を抱く相手だとしても。
愛する恋人の両親だとしても。

「まだナルト、二十歳になっていないからね、こっちはまだ見せられないんだけどね」
「成人指定なんて、ドキドキするってばねっ! ナルト」
「それなら持って来ないでください。というか、アンタ達、息子に何見せようとしているんですか!」

うふふ、と笑うクシナに、カカシはビシッと指を指す。

「このワインは、昔、砂の国が出来た時に……」
「いわく付きを持ち込まないでください! ここで息子相手に何の外交結ぼうとしてるんですか。というか、まだナルトに酒は飲ませませんよっ?」
「そうそう、これね、白からよ。再不斬君と来たかったみたいだけど、用事が出来たそうよ」
「白が? 元気だってば?」
「ああ、元気だよ」
「いやいやいや、死んでますからね? 何でご近所さんみたいな会話になってるんですか」
「ナルト、これどうしたんだい? いつ買ったの?」
「ああ、それは、この前カカシ先生と……」
「まあ、私達の知らない所でデートしたの?」
「ああ、時間が無かったから、任務が終わってちょっと一緒に出掛けただけだってばよ」
「そう、良かったわ。私達が知らない所で、ナルトが怖い目にでも遭ったのかと」
「いや、俺、狼とかじゃないですから。いちおうナルトとも健全なお付き合いを……って、話を聞けっっ!」
「「「ん?」」」
「……」

今日はナルトの誕生日だ。
2人で過ごす為に、任務の調整もした。
休みも合わせて。
カカシだけではなく、きっとナルトも、その努力をしていたはずだ。
明日の夜まで。
2日間、2人で甘い時間を過ごすはずだった。



――が。



(いやいや、いつものペースに持って行かれるなよ、俺)

カカシは上がっていた息を整え、出来る限り平常心を保つ努力をした。

「何故貴方達が居るんです? ナルトとしっかり涙の再会も済ませ、もう、心残りなんてないはずでしょう?」
「どうしたんだい、カカシ。そんなにカリカリして。相変わらず、変わっていないね。しかしそれはいい意味で芯が強いという事だね」
「いい彼氏を持ったわね、ナルト」
「いやぁ……父ちゃん、母ちゃん……」

少し離れた所で、嬉しそうな、しかしながらやや、困惑した表情で、ナルトが3人を見渡す。
その様子に、ナルトも早く自分と2人きりになりたいはず、と自分に言い聞かせながら、カカシは目の前の義理の(になるはずの)親を見る。

「子の自立を阻む原因がいくつかありますが、その中に、親の過保護すぎる干渉というものがあります」
「ナルトは充分に立派に成長したよ。僕達はあまりナルトの成長には関与できなかったからね」
「そうだってばね。親が居なくても、里の英雄になった。父親みたいにね」

胸を張る2人に、カカシは冷たく目を細める。


















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2014.10.14.
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