ナルト・カカシ誕生日

□2014.誕生日ですから
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「――ならば尚更、静観していてくれませんか」
「親が子に会って何が悪いんだい?」
「そう、これまでの分もね」

恋人と親。
どちらの弁が強いかと言えば、それは明白で。
カカシには分が悪い。
カカシは大きくため息をついた。

「――何故、今日なんですか」

「「ナルトの誕生日だから」」

「……ですよね〜……」

口を揃えて答えられ、聞いても無駄だったと、カカシは更に目を細める。
感情の所為か、その目はほとんど閉じんばかりに細められている。

「……ならば、誕生日を祝ったら戻ってくれますか」

カカシの精一杯の譲歩だったが、ニコニコと微笑む夫婦にはあっさりと却下される。

「せっかく会えたのに、すぐに戻ったら、ナルトも寂しいでしょ、ね?」
「こんだけ頻繁に現れていて、何か寂しいですか。さっさと帰れよ」

ミナトとクシナが現れたのは、何も今日が初めてではない。
カカシとナルトの2人きりの時間。
そこには何故か、2人の姿があった。
週に1回以上。
墓参りの年の回数と比較して考えれば、異常な数値だ。
上京した息子だって、こんなに頻繁には帰ってくるまい。
独り暮らしのエンジョイの神髄を理解できまい。

「ナルトも月に一度は墓参りに来ているでしょ。それ以上に現れる霊がどこに居ますか。それもう、ほとんど墓参りの意味無いですからね。目の前にいるんですから。もうただの石磨きですからね」
「ふふーん……。霊じゃないよ。その気になれば実体化も出来るよ」
「やかましいっ」

どこか得意げに近くのコップを持ち上げてみせたミナトに、カカシは愛読書を取り出し投げつけた。
それはきれいにミナトの心臓の上を通ったが、ミナトにぶつかる事無く、後ろの壁へとすり抜ける。

「危ないなあ」
「……どの面下げて……」
「愛情だよ? 子の行く末を見守りたいのは親のサガだ」
「道を踏み外さない様にね、色々と気になるんだってばね」
「毎回、自然の摂理を大きく踏み外している人が何を言うんですか」
「導いてやりたいじゃない。『変な男』に引っかからない様に」

変な男に、が強調されたように感じたのは、カカシの被害妄想か。

「……男の子にも、変な男にひっかからないようにと、使うのですかね」
「どうしたのカカシ、トゲトゲしちゃって」
「まあまあ、父ちゃんも、カカシ先生も、もうその辺で……ケーキでも食うってばよ?」

困ったように、ナルトがクシナを呼ぶ。



――そのナルトの唇の端がわずかに震えているのを、残念ながら3人は見逃した。



「母ちゃん、毎回、あの2人どうにかしてくれってばよ」
「男同士の熱い話があるのよ」
「熱い……つか、寒いんだけど。凍えそうなんですけど!」

静かに火花が散る。
ハンバーグくらいなら焼けそうなほど、じっくりと、中火で。
なのに空気は寒々と痛い。
その様子に、ナルトは軽く頭を抱えた。
今日だけは……と小さく呟いている。

「そんな事していたらナルトは一生独身ですよ」
「いいね! 身の清いまま一生を終えた火影なんて、ロマンチックじゃない! 伝説の火影になるよ」



「……いや〜、でも、父ちゃん。俺もう、清くも無いってばよ?」
「「っ!」」



ナルトの言葉に、ミナトとクシナが同時にナルトを振り返る。

そして、ゆっくりとカカシへと視線を向けた。

「……どう、落とし前つけてくれるの、カカシ」
「うちの子汚したんだから、それ相応の覚悟は出来ているんでしょうね」
「いやいやいや、俺とナルトが付き合ってるの、あんた達もう知ってるでしょうがっ。先週もやりましたよこの下り、もういいでしょ」

毎度の事。
カカシとナルトがイイ雰囲気になると、2人が現れる。
なんやかやと、理由をつけては居座り、おちおちキスも、ハグすら出来ない。
隙を見てスキンシップすれば、彼らに脅される。
ナルトも素直なので、それを隠そうともしない。
カカシのフラストレーションは溜まる一方だ。
これが貯金ならば、瞬く間に国家予算級だ。

「取りあえず、カカシも『こっち側』来ておく? 霊体、便利だよ」
「手伝うってばね」














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2014.10.14.
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