頂き物・リクエスト2
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言葉を失ったカカシに、自来也が静かに続ける。
「ナルトはお前を慕っておる」
「っ? 慕う……?」
それは、どういう意味だ、と、カカシは首をゆるゆると振る。
自来也の言葉の意味が分からない。
カカシは自来也の顔を注意深く見つめる。
しかし、そこにカカシの知りたい答えを見つける事が出来ない。
その様子を感じ取ってか、自来也は小さく息を吐いた。
「ナルトは」
自来也は目を細め、やや遠くを見やる。
「お前に、頭を撫でて貰うのを喜び、抱き締めて貰いたいと思っておる」
「っ……」
『カカシ先生っ』
弾むような声で、表情で、カカシへと駆け寄って来る姿。
無邪気に、何の悪意も感じさせない表情で。
イタズラをした後でさえ、反省よりも拗ねた姿を見せて、大人の気を引いていた。
それは全て、大人に取り入る為の立ち回りの筈だった。
計算された。
カカシが最も腹立たしいと感じる――……。
『先生っ、手、合わせて。……やっぱり先生の手、大きいってばね』
「お前に見ていて貰いたいと……それは、見守っていて貰いたいなんて大きな望みでは無い。純粋に、お前に自分の姿を目に映して欲しいと、視界に入れていて欲しいと、ただ、それだけの意味だった」
憧れの相手に、好意を持つ相手に、自分の姿を見つけて欲しいと。
ただ、それだけの望み。
(見ているじゃないか)
それなのに、自来也は何を話しているのだろう。
何の話を、しているのだろう。
――誰の話を、しているのだろう。
(そんな子供は、知らない)
いや。
(そんな感情は、知らない)
自来也は更に言葉をつなぐ。
「お前の微笑みが、何よりも好きだと笑っておった。カカシ先生は、俺のヒーローだと」
「……」
『先生ってば、すげぇのなっ、な!』
『カカシ先生〜、ラーメン喰いたいってばよ』
カカシの脳裏に思い出されるのは、嫌悪して来た筈のナルトの笑みばかりで、カカシの眉間には深く皴が刻まれていく。
カカシへの称賛の言葉も、甘えた言葉も、全て、カカシ個人に向けられたものでは無い、「大人」へと向けられたもの――……。
たまたま、そこにカカシがいただけの事だ。
カカシへの言葉では無い。
だからこそ、腹が立った。
しかし、それを否定するかのように、自来也が目を細める。
「ナルトは嬉しそうに話しておった。――いや、今でも。さっきのあの瞬間にさえ、お前の助けを信じていただろう」
「……っ」
「まさか、お前に裏切られているなど、夢にも思うておらんじゃろう」
カカシの中に生まれた感情の名を、直ぐにはカカシは見つける事が出来なかった。
それは予想以上に大きな動揺をカカシに与える。
「頭を冷やすといい。しばらくナルトは儂が預かる」
「……」
『カカシ先生』
カカシの瞼に映る、幸せそうなナルトのその表情が、どこか哀しく揺れた。
そんなやりとりから3日後。
自来也はナルトを連れて、ナルトの修行の旅へと連れ出した。
表向きは、修行であったが、実際は、カカシの手からナルトを護る事にあると知る者は、カカシのみである。
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2015.1.15.